プロボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(31=大橋)が6日、東京ドームでWBC世界同級1位ルイス・ネリ(29=メキシコ)との防衛戦に臨む。同興行では4大世界戦としてWBA世界バンタム級王者の弟拓真(28=大橋)も同級1位石田匠(32=井岡)との2度目防衛戦を控える。この井上兄弟を支えるのが父真吾トレーナー(52)だ。2人を世界王者に育成した指導には「根気強さ」がある。

今年2月、横浜市にある大橋ジムでNTTドコモ主催の親子参加イベントが開催。大橋秀行会長(59)とともに講演会に登場した元世界3階級制覇王者八重樫東トレーナー(41)が「僕が学んでいる部分」と真吾トレーナーの指導法を明かした。「真吾さんは、井上兄弟にしつこく注意、指摘するのですよ。尚弥選手はお父さんに注意されることを先回りしてやる。しつこく言う、繰り返し言うと選手は先回りしてやるようになるのだなと感じました」。

八重樫トレーナーが脱帽するほど繰り返す伝達方法について、真吾トレーナーは「親子だからできるのですよ」と前置きした上で、こう続けた。「1度、2度と言ったとしても、やはり人間なので右の耳から左の耳に流れてしまうこともある。自分は(指導を)頭に、体に残したい。体に刷り込まれるまで、言い続けますね。例えばガードが低いと注意し、改善されても確認の意味で、もう1度『ガードね』と念を押しますね」。

実業家としての「顔」を持つ真吾トレーナーは、仕事面でも同様の姿勢で取り組んでいるという。「自分は仕事でも、勉強でも、ボクシングでもそうですが、器用な人が2~3回で分かることを、大げさに言えば5、6回、7回ぐらいかかってしまう不器用なタイプ」と謙遜する。さらに心配性であるとし「きちんと人に伝わっているか不安になり、自分が納得できる形で説明したくなる。気がつくと会社の従業員にも同じようになってしまいますね」と苦笑する。何度でも、何度でも。この根気強さが育成の源泉にある。

ついに6日、34年ぶりという東京ドームでのボクシング興行で、井上尚弥、拓真が防衛戦に臨む。19年11月以来、4年6カ月ぶり。前回は実現できなかった兄弟同時防衛成功のミッションだ。ライブや競技観戦で東京ドームに1度も入場したことがないという真吾トレーナーだが「自分は、あまり会場に対する意識がない。どこの会場でも、自分のやる任務は決まっている。日本でも、海外でも、会場の大きさ、形状を気にしたことがない。言われてみたら東京ドームは巨大なところだなと思うけれど、試合だけに集中するだけ。自分も周りは見えていない。というか、入ってこない」とうなずいた。

根気強さとともに、研ぎ澄まされた集中力も兼ね備えている。その指導者としての「武器」をフル活用し、真吾トレーナーは今夜、国内ボクシング最大級興行で息子2人の同時防衛成功を全力サポートする。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

【ボクシング】井上尚弥がネリと4団体防衛戦 34年ぶり東京ドーム世界戦 ライブ速報します

前日計量をクリアした4団体統一王者の井上尚(左)。右は父真吾トレーナー、中央は大橋会長(撮影・江口和貴)
前日計量をクリアした4団体統一王者の井上尚(左)。右は父真吾トレーナー、中央は大橋会長(撮影・江口和貴)
井上トレーナー(右)が見つめる中、トレーニングをするネリ(撮影・横山健太)
井上トレーナー(右)が見つめる中、トレーニングをするネリ(撮影・横山健太)
プロボクシング WBAスーパー・WBC・IBF・WBO 世界スーパーバンタム級王座統一戦(4団体王座統一戦) 12回戦 井上尚弥対マーロン・タパレス 4団体王座統一戦を制し、父真吾トレーナー(右)と弟拓真(左)と写真に納まる井上尚弥=2023年12月26日
プロボクシング WBAスーパー・WBC・IBF・WBO 世界スーパーバンタム級王座統一戦(4団体王座統一戦) 12回戦 井上尚弥対マーロン・タパレス 4団体王座統一戦を制し、父真吾トレーナー(右)と弟拓真(左)と写真に納まる井上尚弥=2023年12月26日