宮崎駿監督のアニメ映画を舞台化した「千と千尋の神隠し」が4月30日夜(日本時間5月1日)、ロンドンにある2300人収容の大劇場コロシアムでロンドン公演の初日を迎えます。

日本では2022年に初演され、今年3月に東京・帝国劇場で再演の幕を開け、名古屋・御園座公演を経て、4月27日には博多座で開幕したばかり。5月は大阪、6月は札幌でも公演があり、日本と英国で同時上演という快挙が実現します。

これまで日本からロンドンに進出した舞台では、劇団四季の「ジーザス・クライスト=スーパースター」、シェークスピア作品をもとにした蜷川幸雄演出の歌舞伎「十二夜」、海老蔵時代の市川團十郎の歌舞伎公演などに同行して取材したことがありますが、それらはいずれも短期の公演でした。今回の「千と千尋の神隠し」はチケットの売れ行きが好調だったため、当初の上演予定よりも5週間も延長して、8月24日まで、135回の公演が続きます。

宮崎監督のアニメ映画の舞台化と言えば、すでにロンドンではロイヤル・シェークスピア・カンパニーと日本テレビの共同制作によって「となりのトトロ」が22年10月から23年1月まで上演され大ヒットしました。英国の演劇界で最も権威あるオリヴィエ賞で作品賞など6冠に輝き、23年11月から今年3月まで再演されました。初演・再演ともチケットは完売し、合わせて29万人が観劇する人気ぶりでした。そして、先日には25年3月から無期限ロングランされることも発表されています。

「千と千尋の神隠し」は日本人キャストによる公演ですが、前評判は高く、一番高い席で225ポンド、安い席でも92ポンドと、現在の1ポンド=197円のレートから換算すると、1万8000円から4万円を超える高額チケットにもかかわらず、若い人を中心に売れているそうです。千尋役には橋本環奈、上白石萌音、川栄李奈、福地桃子の4人に加えて、日本ではアンダースタディとして控えていた森莉那が9公演だけですが、ロンドンの舞台に立つことが決まっています。目の肥えたロンドンっ子が、日本発の舞台「千と千尋の神隠し」にどんな反応をみせるのか。ちょっと楽しみです。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)