1月期の冬ドラマも中盤。配信収入ねらいで各局が次々とドラマ枠を増やし、東京の民放だけでも週40本近いドラマが放送される中、今期も俳優の掛け持ちは常態化し、設定や小ネタののかぶりも多発しています。「どこかで見た」感に、受け手もますます慣れが必要な時代です。
◆前クール類似系
今期特に目立つのは、「前のクールで見たばかり」というタイミングでの放送。NHK「大奥」が終わった直後にフジテレビが「大奥」(主演小芝風花、木曜10時)。「大奥」コンテンツとしてはフジの方が“本家”ですが、NHK版の圧倒的な余韻が残る中ではさすがに分が悪く、「20年ぶりに復活」の看板がかすみがちになってしまったのはもったいないところです。
日本テレビ系「厨房のありす」(主演門脇麦、日曜10時半)は、前クールのフジ系「あたりのキッチン!」(主演桜田ひより)の直後で、やはり既視感との戦いに。コミュニケーション能力に壁を抱えながらも、天才的な味覚力で人とかかわっていくという骨子が同じであるだけに、1話を見て離脱したとみられる視聴率推移は否めません。
TBS系「さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~」(日曜9時)は、昨年の日テレ「リバーサルオーケストラ」(門脇麦×田中圭)の印象が強く残る中でのスタート。ワケあって帰国した天才指揮者、音楽をやめて市役所職員となった女性バイオリニスト、存続危機の市民オーケストラ、「3カ月で満員」のミッションなど、あまりにも似ているとネットでも話題に。音楽の使い方のうまさやストーリーの推進力は「リバオケ」に軍配があり、やはり後発の難しさを感じます。
◆小ネタ系
お父さん主人公多発、芸人さん主演ドラマ多発、ファンタジー設定多発(テレパス、幽霊、タイムリープ、あの世使者など)など、すでに指摘されている設定かぶりの多さはもちろんのこと、小ネタのかぶりも相変わらず多いです。
まずは干支(えと)かぶり。検察審査会をテーマにしたテレビ東京系「ジャンヌの裁き」(主演玉木宏、金曜8時)は、「甲野」「卯之助」など役名に干支が入っており、「陰険な目をした『蛇塚』」など、キャラクターを表していたりもします。日テレ系「新空港占拠」(主演櫻井翔、土曜10時)は、武装集団「獣」のモチーフが干支。メンバーはそれぞれの干支の仮面をかぶっているという初期設定です。
仮面系で言えば、テレ朝系「マルス-ゼロの革命-」(主演道枝駿佑、火曜9時)はオオカミの着ぐるみ。悪を退治する動画集団「マルス」を象徴するモチーフで、主人公の覆面シーンなどで登場しています。
ほかにも、フジ系「院内警察」(主演桐谷健太、金曜9時)は、手術の才能「ギフト」を授かった天才外科医が登場し、テレ朝系「グレイトギフト」(主演反町隆史、木曜9時)は、主人公が見つけた殺人球菌を「ギフト」と命名するギフトかぶり。フジ系「君が心をくれたから」(主演永野芽郁、月曜9時)は、毎回五感をひとつずつ失っていくまでのカウントダウン、同「春になったら」(奈緒、木梨憲武ダブル主演、月曜10時)は命を終えるまでのカウントダウンで、フジの月曜はカウントダウンの2階建てです。
◆掛け持ち出演系
NHKを含め、今や当たり前の光景となった掛け持ち出演も活発です。
日テレ系「消せない『私』-復讐の連鎖-」(金曜深夜0時半)、中京テレビ「こんなところで裏切り飯」(木曜深夜1時4分)の2本に主演している志田彩良さんをはじめ、昨年乃木坂46を卒業した影山優佳さんは、「春になったら」、テレ東系「ハコビヤ」(主演田辺誠一、金曜深夜0時52分)で掛け持ち。日テレ系「となりのナースエイド」(主演川栄李奈、水曜10時)で誠実な先輩ナースエイドを演じる水野美紀さんは、テレ朝系「離婚しない男」(主演伊藤淳史、土曜11時半)で「お○ックス」連発の弁護士を怪演中です。
挙げるときりがないので特徴的なケースのみ紹介すると、松下由樹さんはテレ朝系「恋する警護24時」(主演岩本照、土曜11時)、フジ系「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」(主演原田泰造、土曜11時40分)で土曜深夜に2連発。国仲涼子さんは、NHK大河「光る君へ」と日テレ系「厨房のありす」の両方で“ヒロインの幼少期に悲劇的な死を遂げる母親”を演じています。
その「厨房のありす」でヒロイン門脇麦さんの幼少期を演じた子役の泉谷星奈ちゃんは、前クールの「あたりのキッチン!」でもヒロイン桜田ひよりさんの幼少期を演じていて、相関図かぶりも発生しています。ちなみに星奈ちゃんは「春になったら」「消せない『私』-」にも出演しており、今期はドラマ3枠に登場しています。
視聴率が頭打ちとなる中、若い視聴者層の獲得と、配信による二次収入が見込めるドラマは今や各局の編成戦略の中心。毎年のようにドラマ枠が新設され、昨年だけでもテレ朝系日曜10時、フジ系火曜11時、同金曜9時、日テレ系金曜0時半などが新たにお目見えしています。プロデューサーも脚本家も不足する中、器用な俳優頼みや設定かぶりは避けられないのが現状です。あるある込みで、中盤、終盤を楽しみたいと思います。【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)