日本でのカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件で、収賄容疑で逮捕された衆院議員秋元司容疑者(48)が中国企業側から受け取ったとされる現金300万円が、選挙の陣中見舞い名目だった疑いがあることが26日、関係者への取材で分かった。授受は衆院解散当日の17年9月28日だった。現職国会議員逮捕から一夜明け、衝撃が永田町を覆う中、安倍晋三首相は質問に答えず、政府側の歯切れは悪い。野党は「秋元ゲート」と位置づけ追及を強めている。

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自民党を離党したとはいえ、政府でIR担当副大臣を務めた与党議員の逮捕に加え、別の自民党国会議員が東京地検特捜部の家宅捜索を受ける事態。さらに政界に波及しかねず、米政界で起きた大スキャンダル、ウォーターゲート事件をもじって「秋元ゲート」(野党関係者)との指摘も出る中、容疑者逮捕から一夜明けた26日、政府や自民党関係者の口は、重かった。

この日、第2次安倍政権発足から7年の節目を迎えた首相は「これからも初心を忘れず、しっかりとやりたい」と語ったが、秋元容疑者の逮捕についての質問には答えなかった。菅義偉官房長官も「(逮捕は)大変残念」とした上で「捜査機関の活動内容に関わる事柄で、コメントは控える」と、述べるにとどめた。

野党側は、「桜を見る会」に続く設置となる追及本部の初会合を開催。内閣官房の担当者に、秋元容疑者の副大臣当時の出張記録などを提出するよう求めたが、政府側は捜査中を理由に応じなかった。政府は来年1月7日に「カジノ管理委員会」を立ち上げる予定を崩していないが、野党からは、今回の逮捕劇を受けて見直しを求める声も出た。

一方、立憲民主党の安住淳国対委員長は、自民党の森山裕国対委員長に年内の閉会中審査開催を求めたが、森山氏は拒否。協議の結果、来年1月8日の衆参両院の内閣委員会理事会で、政府側が今回の事件について説明することになった。

贈賄容疑で逮捕された紺野昌彦容疑者(48)は、自民党の複数の国会議員との写真をSNSに掲載し、政界人脈の太さをアピール。与党内には、かつて起きた大型贈収賄事件、リクルート事件のように拡大しないか、懸念する向きもある。

安住氏は「『IR疑獄』ではないか」と、事態の深刻さを指摘。立民の枝野幸男代表も会見で「法制定のプロセスから進めていた人間が、反社会的勢力だった。カジノそのものの正当性が根底から覆された」とした上で「安倍内閣の副大臣としての職務権限に基づく疑獄事件。まず総理や官房長官が明確な見解を示すべき」と、ダンマリ政府を批判した。