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海老蔵「映画集中が父への薬」

 父の全快を信じて現場に立ち続けた。市川海老蔵(28)がスクリーンデビューする映画「出口のない海」(佐々部清監督)の公開が16日に迫った。撮影開始直前に急性前骨髄球性白血病と闘う父、市川団十郎(60)が再入院した。演技に真剣に向き合うことが何よりの良薬になると信じ、看病より仕事を選んだ。父が舞台復帰した今だから語れる、胸中を聞いた。

 映画撮影開始の2カ月前、父の再入院が決まった。最初の入院中、海老蔵は「生死の瀬戸際もさまよい、私もどうしていいか分からなかった」と混乱した。危機を脱して退院したが、その後の徹底した検査で再発が判明。担当医は「治療には相当の覚悟が必要」と言った。

 歌舞伎公演で埋め尽くされたスケジュールをこじ開けて出演を決めた初主演映画の撮影が迫っている。看病か撮影か。迷いに迷った。「自分が芝居、それも初めての映画に集中して真剣に向き合うことが父にとって最良の薬になるはずだ」。周囲に思い込みと言われてもいい。「責任を全うすることが父を安心させ療養につながる」と強く信じた。看病は母と妹に託した。

 撮影は昨年10月22日に山口・下松市の古い野球場で開始。その後も下関市、福岡市、北九州市と移動しながら約1カ月続いた。撮影に支障のない時間に病院に電話を入れた。「父は映画について触れようとしませんでした。私も父の体調だけ聞いて、自分から撮影のことは言いませんでした。あれこれ言わないことが順調に進んでいる証拠ですから。父もそう感じていたと思います」。

 「出口のない海」は太平洋戦争中の悲劇を描いた作品。海老蔵は人間魚雷「回天」に乗り込む元甲子園優勝投手役。大学で野球を続ける夢を断って決死の作戦に志願する青年を演じた。全快を祈りながらも父を失う覚悟をした時もあっただけに、役に向き合うたびに「命」を強く意識した。

 撮影終了から約3カ月が過ぎた今年2月、団十郎は闘病生活を乗り越えて退院した。戦争で命を失った若者を思い、生還した父の姿を見た海老蔵は「生きているということは、ただそれだけで素晴らしいと思う」と実感している。

 先日、東京・歌舞伎座で行われた試写会で団十郎は映画を鑑賞した。海老蔵には伝えていないが、周囲には「いい映画だった」と話しているという。

[2006年9月11日7時17分 紙面から]

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