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中井奮闘…主演&製作の日中合作映画撮影
- ジン・チェン監督(左)と撮影について話し合う中井貴一
中井貴一(45)が初めて映画プロデュースに乗り出した日中合作映画「鳳凰」の撮影現場で奮闘している。ただ1人の日本人俳優として主演しながら、配役、脚本作り、撮影地や宿泊先選びなど製作の仕事も中心になって進めてきた。3年前、主演した中国映画の現場で文化や環境の違いに苦しんだ。リスクの多い撮影を選んだのはなぜか。中井に密着した。
巨大オープンセットが立ち並ぶ北京郊外の撮影所。クランクインを迎えた撮影隊は広大な敷地内の一角にいた。気温30度を超える暑さと中国特有の砂ぼこり。厚手衣装に身を包んだ中井は穏やかな表情で待機していた。ファーストカットは民衆に囲まれた主人公が後ろ髪を切り落とす場面。通訳を介してジヌ・チェヌ監督(36)と言葉を交わしながら無事撮り終えた中井は「ここまでこぎつけたという思いが自然に込み上げてきます」。
日本人俳優が初めて中国映画製作に携わった。03年「天地英雄」の好演で再び出演依頼が届いた。説明もないまま、突然撮影が中止になり、新疆(しんきょう)ウイグル地区で何日も待機が続く日々を過ごした苦い経験を思い出した。中国俳優でさえなじめない食事が続き、宿泊先も衛生面の配慮がなかった。「映画の現場も階級制が強く、俳優の立場では意見することが難しかった。プロデューサーも兼ねれば撮影に集中できる環境が作れる」。
中国に思い入れがあったわけではない。国内に比べて経済的に見合う仕事でもない。周囲から「また冷水に飛び込むのか」とも言われた。突き動かしたのは日本人としての意地と映画人としての夢だった。「もう1回挑戦することで相手も認めてくれるはず」。尊敬する高倉健(75)が昨年、中国映画「単騎、千里を走る」に単身参加し、日中映画界の交流を切り開いた。「日本の映画人が広大な中国を使って思うように撮影ができるようになるきっかけになりたい」。また「日本でのイメージとまったく違う想像を超える角度で自分をとらえてくれる」と新たな刺激も求めている。
準備のため北京と東京を1年間で6往復した。脚本作りで「激論になったこともあった」。限られた予算をにらみながら最善の宿泊先も探した。中国語日常会話も特訓。都内の中国大使館に足を運び、撮影協力も呼び掛けた。想像以上にハードだった。
初日は2シーンを順調に撮り終えた。「天地英雄」はカメラを回すまで3日かかった。「小さな1歩を積み重ねていく。今はそれしかありません」。撮影は北京を中心に重慶、ハルピンなど各地で行い、12月に終了する。【松田秀彦】
[2006年9月19日8時33分 紙面から]
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