一関学院・夷塚、東北大会へ 甲子園一家の血が騒ぐ

くじを引く一関学院・夷塚主将(撮影・高橋洋平)

 来春のセンバツの重要参考資料となる秋季高校野球東北大会(13日開幕)の組み合わせ抽選会が3日、開催地の福島市内で行われた。一関学院(岩手3位)は13日の開幕戦で八戸学院光星(青森3位)と対戦する。来春のセンバツは第90回記念大会となり、東北地区の一般選考枠が1つ増えて3枠となる。一関学院は過去2度のセンバツ出場がいずれも希望枠。父、叔父、兄が甲子園を経験している野球一家に生まれた夷塚(えぞづか)郁斗主将(2年)がチームを引っ張り、初の一般選考枠での出場を狙う。

 頂点しか見ていない。八戸学院光星に相手が決まると、甲子園一家に生まれた夷塚の血が騒いだ。

 「ここまで来たら技術じゃなくて気持ち。光星には負けたくない。絶対センバツに出て勝利を挙げて、父を超えてみせる」

 父博さん(47)、叔父の誠さん(43)は一関学院OB。一関商工時代に出場した甲子園で、ともに夏1勝を挙げた。卒業後、博さんはNTT東北(宮城、現東北マークス)、誠さんはJR東日本東北(宮城)で都市対抗に出場するほどの実力者だった。夷塚は「2人のプレーは見たことないけど、今でもすごかったと言われる。刺激になる」と尊敬のまなざしを送る。

 さらに兄圭汰さん(22=JR東日本東北)は東北(宮城)で東日本大震災直後の11年センバツに出場。小4で甲子園を初めて訪れた夷塚は「将来、ここでプレーしたいと思った」と聖地への思いを熱くした。仙台市出身で、兄2人は東北に進学したが、夷塚だけが一関学院に進んだ。「兄ちゃんとは違う高校で甲子園に出たかった。父の母校で挑戦したかった」と岩手へ野球留学の道を選んだ。

 白球が友達だった。物心ついた3歳の頃から父、兄の影響で野球を始めた。「強制です。グラウンドで育ったようなもんです」。持って生まれた天性の野球センスで、高校入学当初の春の地区大会からベンチ入り。1年秋から正遊撃手に定着し、新チームからは主将を任され3番に座る。

 一般選考枠は3つに拡大するが、優勝でのセンバツ出場しか考えてない。08年秋の東北大会は、準優勝してセンバツ切符をほぼ手中に収めるも、菊池雄星(現西武)擁する花巻東に逆転進出を許した。「先輩から聞いたことがあるけど、意識しないで1つ1つ勝っていきたい」。センバツ出場を決めて、野球に導いてくれた家族に恩返しをする。【高橋洋平】

 ◆夷塚郁斗(えぞづか・ふみと)2000年(平12)6月19日、宮城・仙台市生まれ。3歳から野球を始め、蒲町中では宮城臨空シニアに所属。一関学院では1年春からベンチ入り。右投げ右打ち。174センチ、72キロ。家族は両親、兄2人。

<対戦が決まった各校主将>

 ▼八戸学院光星(青森3位) 長南佳洋主将(2年)が一関学院戦に向けて闘志を燃やした。「相手は関係ない。一戦必勝でやるだけ」。青森大会準決勝では延長戦で決勝本塁打を打たれ、優勝を逃した。「自分たちに隙があった。2季連続で甲子園を逃してしまっているので、絶対にセンバツに行きたい」と2年ぶりの出場を切望した。

 ▼仙台育英(宮城1位) 阿部大夢主将(2年)が3季連続の甲子園出場に自信を見せた。エース佐々田依吹投手(2年)とは秀光中からバッテリーを組んでおり「去年からツーシームを覚えて、カウントも空振りも取れるようになった。投球の幅が広がった」と万全を強調。6日に開幕する愛媛国体を欠場し、2年連続の東北大会優勝を狙う。

 ▼聖光学院(福島1位) 優勝候補に挙がる聖光学院が、地元開催で初優勝を狙う。初戦(2回戦)は初出場の仙台南(宮城3位)と顔を合わせる。夏の甲子園を経験した矢吹栄希主将(2年)は「どこが来ても厳しい戦いになる」と、浮かれた様子はなかった。

 県大会5試合の1試合平均は8・4点。3試合がコールド勝ちと、クリーンアップを中心に打線は破壊力を秘める。矢吹主将は「3年生に打力は劣っていないと言われた」と話す。開催県の福島3校で、同主将は一番若い抽選番号を引き、選手宣誓が決定。強運ぶりも見せつけた。「この秋で終わりなんだ、というつもりでやってきた」と、全選手の思いを口にした。日程面でも連戦は準決勝、決勝だけ。東北王者となって5年ぶりのセンバツへ。追い風が吹き始めた。

 ▼仙台南(宮城3位) チームメートから「聖光は引くな」と言われていた宍戸翔主将(2年)が、甲子園常連校の隣を引き当てた。「さらにギアを上げて練習するしかない」と気後れすることなく、前を見た。春秋通じて初の東北大会出場をたたえ、2日に全校集会が開かれた。同主将は「これからも史上初の記録をつくっていきたい」と表明。1勝へ格好の相手となった。

 ▼酒田南(山形1位) 2回戦から登場し、光南(福島2位)との対戦が決まった。池田昂平主将(2年)は「いつも通り、謙虚で我慢強い野球をやりたい」と闘志を燃やした。エース左腕阿部雄大(2年)に安定感があり、1年生4番の伊藤海斗外野手も注目される。昨秋の東北大会は準決勝で盛岡大付(岩手)に1点差で敗れ、センバツを逃した。1年前の悔しさもぶつける。

 ▼由利工(秋田3位) 初出場で旋風を巻き起こす。畑山陸翔主将(2年)は最速142キロのエース佐藤亜蓮投手(2年)とバッテリーを組む。14日に行われる弘前東との初戦(2回戦)に向けて「組み合わせどうこうじゃない。(佐藤は)負けず嫌いで、球に力がある。しっかりリードしたい」と意気込んだ。