函館工が21世紀枠候補 60年ぶり出場へ吉報待つ

21世紀枠候補校に選ばれて笑顔を見せる函館工ナイン(撮影・西塚祐司)

 第90回選抜高校野球大会(来年3月23日開幕、甲子園)の21世紀枠候補9校が15日、日本高野連から発表された。北海道地区は函館工が初めて候補校となった。今夏の南北海道大会4強、今秋の全道大会8強の成績や地域に根ざしたボランティア活動などが選考理由だった。3校が選ばれる21世紀枠は、一般選考と同じ来年1月26日に決定する。道内屈指の古豪が60年ぶり2度目となるセンバツ出場の朗報を心待ちにする。

 初の21世紀枠推薦校となった函館工の校内は高揚感に包まれた。全校生徒にプリントを配り、選出を伝え、校門に横断幕を設置した。時田幹太主将(2年)は「今日が楽しみでした。ホッとしています」と喜んだ。函館地区から04年函館中部以来2度目の選出。えんじ色軍団は、グラウンドに集まると気を引き締めて練習を始めた。

 限られた環境下で好成績を収めてきた。この夏、公立校で唯一南大会4強。秋は全道大会8強入りした。グラウンドは他4つの部と共同使用。1日約2~3時間と「短期集中型」の練習は、常に試合を想定している。守備練習時、アウト数や走者など試合の細かい場面を設定して行う。硬いグラウンド対策のため、あえて校内駐輪場のコンクリートでノックするケースも。春夏秋冬、工夫することで条件面を克服してきた。

 地域に密着したチームを目指してきた。15年から五稜郭公園外周を約2000個の電球で彩る冬の名物「ほしのゆめイルミネーション」の製作ボランティアに参加。ナインは10キロ近くある土のう運びや電飾の設置など協力してきた。建築科の部員は課題研究で製作した机を児童会館に寄贈したり、幼稚園の看板修理など、町作りに貢献してきた。

 来年1月、21世紀枠3校に選出された場合、センバツ出場は60年ぶり2度目となる。毎年、3年生は卒業製作で打撃ケージや鉄バットなど野球用具を残し、後輩に夢を託してきた。つないできた悲願への思いが、あと1歩で実ろうとしている。「具体的な目標があって冬のモチベーションが上がる。甲子園に行くつもりで練習したい」と時田主将。創部87年目の伝統校が、42日後の吉報を待ち望んでいる。【西塚祐司】

 ◆函館工野球部 1931年(昭6)創部。甲子園出場は春1度(58年)夏4度(47、48、57、63年)。夏は全国中等学校優勝大会だった47年に初出場し、臼杵中(大分)を5-3で下し初勝利。48年には2勝を挙げベスト8に進出するなど通算4勝。道大会出場は春17度、夏37度、秋24度を誇る。現部員は1、2年生で45人。主なOBに楽天青山浩二投手。

 ◆センバツ21世紀枠 練習環境などの工夫、地域貢献など野球の成績以外の要素を考慮し、出場機会を広げる目的に01年大会から導入された。秋季都道府県大会のベスト16以上(加盟校129校以上の都道府県はベスト32以上)など規定をクリアし、高校野球の模範的な活動をしている学校が選ばれている。この日発表された各地区候補9校のうち3校が来春のセンバツに出場する。選考委員会は来年1月26日。