クラーク仙台、東北初の高校女子硬式野球部が始動

「東北から日本一」を狙うクラーク仙台キャンパスの選手たち(撮影・神稔典)

 東北初の高校女子硬式野球部が始動した。宮城県のクラーク仙台キャンパス(仙台市若林区)に通う第1期生11人が4日、七ケ浜野球場で初練習を行い、本格的なチーム作りが始まった。プロ野球の楽天が同校と提携して活動に協力。元楽天選手でジュニアコーチを務めていた山崎隆広氏(41)が監督を務める。昨夏の女子軟式野球全国大会で優勝した小野寺佳奈投手と庄司美空(みく)内野手(ともに1年)は地元宮城の出身で、11人中7人が県外からの入部だ。覚悟を決めた乙女たちが、全国制覇を目指す。

 遅い春が、ようやく到来した。東北地方は、他地区に比べて女子野球の発展が遅れており、これまで高校の女子硬式野球部は存在しなかった。小学生で野球をやっていても、競技を続けられる環境がないため、中学進学と同時にソフトボールなどの他競技に転向する選手が多くいる。その現状を打破しようと、同校と楽天が動いた。

 4日、七ケ浜野球場(宮城県七ケ浜町)に、クリムゾンレッドの真新しいユニホームを着た11人の元気な声が響いた。チームの柱は、昨夏の女子軟式野球学生選手権で全国優勝を果たした宮城デイジーズの2人だ。エースの小野寺は、初戦から決勝まで4連投の大活躍で日本一に導き「あの時の経験は自信になった。目標は日本一のピッチャーになること」と大志を抱く。直球が武器で、チェンジアップ、カーブ、縦のスライダーと変化球も充実。渡辺崇部長(38)も「120キロ台を投げれば剛腕と言われる女子野球で、すでに110キロ台中盤を投げる良い選手」と期待する。

 メンタル面でチームを支えるのは、同チームで主将を務めた庄司だ。「常笑軍団」をスローガンに、全国大会を制した経験から「苦しい時でも楽しむことが大切。うるさいと言われるくらい積極的に声を出していきたい」と意気込む。

 チームを率いるのは、元楽天外野手で09年の引退後はジュニアコーチを務めた山崎監督。すでに彼女たちが発する「やる気」を感じており「昨年、数回行われた硬式野球部体験会で『早く野球がしたい』と、駐車場でキャッチボールをしたり、素振りをしたりしていた。寮の近くにある駅から発車する電車と競走したり、練習時間が終わってもバッティングをやめようとしなかった」と振り返る。そんな姿を見て、山崎監督は「身体能力の高い選手も多いですよ。何より、練習を通して純粋に野球が好きという気持ちが伝わってくるんです」と、指導者としての喜びを実感している。

 チームの半分以上は県外からの選手だ。15歳の彼女たちは「硬式で野球をやりたい」、そんな大きな決断をして、宮城にやって来た。山崎監督は「覚悟と根性もあるはず。やるからには日本一を狙います」。目標達成へ、1段ずつ階段を駆け上がる。【神稔典】

 ◆庄司美空(しょうじ・みく)2003年(平15)3月13日、宮城・利府町生まれ。利府二小2年から多賀城ニューパワーズで野球を始め、利府西中3年時には宮城デイジーズの主将として全国制覇。右投げ右打ち。家族は両親と兄。

 ◆小野寺佳奈(おのでら・かな)2002年(平14)5月12日、宮城・仙台市生まれ。松ケ浜小2年から七ケ浜パイレーツで野球を始め、七ケ浜中3年時には宮城デイジーズのエースとして全国制覇。右投げ右打ち。家族は両親と兄、妹2人。

 ◆クラーク 正式名称はクラーク記念国際高校。1992年(平4)に広域通信制高校として日本で6校目、25年ぶりの認可を受け開校した。校長は13年に80歳(当時)で3度目のエベレスト登頂に成功した三浦雄一郎氏。16年夏の甲子園に出場した硬式野球部のある北海道の深川本校をはじめ、全国にキャンパスがあり、現在の在籍生徒数は全国で1万1000人以上。卒業生にはソチ五輪スノーボード女子パラレル大回転銀メダリストの竹内智香(34)ら。