昨夏日本一花咲徳栄56発男野村が大会の顔/北埼玉

ハンマーでタイヤをたたくトレーニングをする花咲徳栄・野村(撮影・金子真仁)

<ピカイチ打者編>

 高校野球特集の第2回は、日刊スポーツ記者が全国の有望打者にスポットを当てる「ピカイチ打者編」。昨夏甲子園優勝の花咲徳栄(北埼玉)・野村佑希内野手(3年)は、ミレニアム世代屈指のスラッガーに成長した。投手起用も予想される北埼玉大会での背番号は「1」に決まったが、“本業”での活躍が甲子園連覇への絶対条件。「大会の顔になりたい」と意気込む。

 野村は迫る白球の、中央やや下に漆黒の金属バットを重ねる。時速160キロ近くのスイングスピードで強烈なスピンがかかり、打球は勢いよく舞い上がる。「140キロまでの直球なら、技術で対応できると思います」。昨夏、日本一の4番打者になってからも研さんを積んだ。

 高校通算本塁打は3日現在、56本。昨年の早実・清宮(日本ハム)の111本の約半分だが、右打ちなどチーム打撃の場面も多く、野村も「本塁打は打てたらいい、くらいの気持ち」と気にしていない。岩井隆監督(48)からは「騒がれても、数や飛距離にとらわれない。本当に野球が大人になった。警戒され、食らいついた中での本塁打です。野村の一番の良さは対応力。これに尽きます」と充実ぶりを絶賛された。

 夏の目標を聞かれると、しばらく考えてから「大会の顔になりたい、というのはあります」と言った。昨夏の甲子園決勝、試合後の整列。優勝の感動よりも、斜め前に広陵・中村奨成(広島)がいて、先輩たちとやりとりしていることに興奮した。「すごい瞬間に立ち会っているな、って」と思った。

 その立場に己を重ねる。ネクストバッターズサークルに立つと、球場の空気が変わるのが分かる。大ファウルを打てば、相手捕手が声にならない悲鳴を上げる。投手は悲壮な顔になる。20世紀最後の年に生まれた右スラッガー。今は名前の漢字を間違えられることもある野村佑希が、100回大会にその名を刻む。【金子真仁】

 ◆野村佑希 のむら・ゆうき。2000年(平12)6月26日、米ミシガン州生まれ。父の仕事の都合で3歳までアメリカで暮らし「ジェームス」というミドルネームを持つ。帰国後は群馬・伊勢崎市で育つ。中学時代は太田市シニアでプレー。握力は右67、左65。遠投は110メートルで、投手としても最速146キロ。