イチローが感極まった王さんの言葉と球団のプレート

3000安打記念セレモニーで電光掲示板に映し出された王氏からのメッセージを聞くイチロー(撮影・菅敏)

<マーリンズ10-3パイレーツ>◇4月30日(日本時間1日)◇マーリンズパーク

 マーリンズ・イチロー外野手(43)のメジャー通算3000安打達成セレモニーが、パイレーツ戦前に本拠地マーリンズパークで行われた。球団から記念のプレートを贈られ、さらに第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でともに戦った王貞治氏のビデオメッセージが流されると感極まった。試合では代打で出場し、今季初の四球で出塁。チームは10-3で勝った。

 予想していなかった演出に、イチローが感激した。記念のプレートを受け取った後、司会者が「もう1つ贈り物があります」と切り出すと、球場の巨大スクリーンに第1回WBCを制した時の監督、王貞治氏(現ソフトバンク球団会長)が映し出された。お祝いのビデオメッセージだった。

 「好きな野球、もっともっとやって、1本でも多くヒットを打ってください」。その言葉をかみしめたイチローは「王監督は優しい、というか、厳しい方ですけど、すごい温かみがある。それがにじみ出ている。あれは感激しましたね」とうれしさを表現。「王監督のお姿を拝見できるとは思ってなかった。あれが一番驚きました」と球団からのサプライズに感謝した。

 記念品のプレキシガラス製プレートも、これまで見たことのないような力作だった。3000本それぞれの安打を放った際の写真をすべて合わせて横2・6メートル、縦1・2メートルの巨大プレートに仕上げた。

 写真を集めるだけで1カ月以上かけ、多くの球団職員によって完成された。サムソン社長によると「ロリア・オーナーから、他にない、一生の記念になるものにしようということで、これに決まった」という。イチローは「アートだね。(画商の)ロリアっぽい。あれを置ける家を買わなきゃいけないですね」とちゃめっ気たっぷりに笑った。

 試合が始まると、攻守交代時にはマリナーズ時代の恩師ルー・ピネラ氏ら球界関係者の祝福メッセージが流され、元同僚で通算630本塁打を誇るケン・グリフィー氏らもビデオで登場した。イチローは代打の準備でベンチ裏にいたため「見られていないんですよ」。それでも多くの人に感謝している様子だった。

 試合では6回1死で代打で登場。1度もバットを振ることなく一塁へ歩いた。右手でバットを持ったおなじみの姿や「3000」などが記された記念球で行われた一戦。誰よりも拍手、歓声を送られていたのはやはりイチローだった。【水次祥子】