大谷 イチローのフィールドで進化、魅せた緩急

マリナーズ戦に先発し、6回0/3を6安打2失点で3勝目を挙げたエンゼルス大谷(撮影・菅敏)

<マリナーズ2-8エンゼルス>◇6日(日本時間7日)◇セーフコフィールド

 エンゼルス大谷翔平投手(23)が、イチローが歴史を紡いできた場所で躍動した。マリナーズ戦に先発登板。カーブを多投するなど進化した投球で、7回途中6安打2失点で約1カ月ぶりに3勝目(1敗)を挙げた。2日前には5番指名打者(DH)で出場し、2安打1打点。マリナーズの会長付特別補佐に就任したイチロー(44)が、メジャーの常識を覆してきたセーフコフィールドで投打二刀流の本領を発揮した。

 大谷は、イチローが躍動した憧れの球場のマウンドで気持ちよさそうに腕を振った。打者と対峙(たいじ)する中で、プレート板からホームベースまで距離18・44メートルが「近く感じた」という。左足首の捻挫で登板間隔が中11日空いたが、その影響を感じさせなかった。6回までピンチらしいピンチはなし。「アメリカに来てから一番思った通りに投げられたし、体も良い感じで動いていた」と穏やかな表情で振り返った。

 イチローの前で進化した投球を見せた。過去4度の登板とは明らかに違っていた。1試合で数球しか投げないカーブを1回に4球投げるなど緩急をうまく使った。最速は99・5マイル(約160キロ)で、最も遅いカーブは74・2マイル(約119キロ)。差は約41キロ。打線を映像で分析し、公式戦で初めて組んだ捕手のリベラと綿密に配球を話し合っていた。

 思考の変化もあった。これまでは事前にもたらされるデータに対し「あまり考えるタイプではなかった」と打ち明けた。「自分がやってきたものを出せば負けない」と、独自のスタイルを貫き「そういう身体的な部分で勝負してきたところが多い」と振り返る。だが、5試合目の先発登板を前に「やっぱりそれだけでは補えない。活用しない手はない」と思慮した。

 6点リードの7回に安打で初めて先頭を出し、2ランを浴びた。さらに四球を与えたところで交代となった。敵地のファンですら拍手やスタンディングオベーションでたたえる98球。だが、「ワンサイド(ゲーム)でいけるかもしれないという状況の中で、まだチャンスがあるかもしれないと(相手に)思わせるような降り方は、一番良くない」と悔しさをのぞかせた。

 イチローはセーフコフィールドで歴史を塗り替えてきた。パワー野球が主流のメジャーに風穴をあけ、技術やスピードで勝負するスモールベースボールの価値を上げてきた。その球場で対戦は実現しなかったが、大谷はベンチ裏でトレーニングしながら画面を見ていたイチローに投げ勝つ姿を見せられた。

 イチローにアピールできたか? と問われ「いいところも悪いところもあった」と答え、何を見せられたかと聞かれると「勝てて、そこじゃないかなと思う」と言った。「今回もしかしたら、できるかもしれないと思っていた。僕自身もやるなかで勉強になることもたくさんあると思う」。来季以降、実現するかもしれない対戦に思いをはせた。【斎藤庸裕】