ドジャース勝ち呼ぶイチかバチかのマル秘サイン ホイール・プレーとは?/Nobu’s Eye

地区シリーズ・フィリーズ対ドジャース 9回裏フィリーズ2死一、三塁、T・ターナーを二ゴロに仕留めゲームセットとし、マンシー(左)、フリーマン(中央)にタッチで迎えられる佐々木(撮影・菅敏)

<ナ・リーグ地区シリーズ:フィリーズ3-4ドジャース>◇第2戦◇6日(日本時間7日)◇シチズンズバンクパーク

【フィラデルフィア(米ペンシルベニア州)6日(日本時間7日)=斎藤庸裕】入念な準備を重ねていたドジャースの連携プレーが重要局面で生きた。1点差に詰め寄れられた9回無死二塁、フィリーズの左打者ストットのバントを三塁手のマックス・マンシー内野手(35)が捕球。三塁ベースカバーに入ったムーキー・ベッツ内野手(32)に送球して二塁走者をタッチアウト。「ホイール・プレー」と呼ばれる守備シフトが勝敗を分けた。シーズン中にもあった“秘密のサインプレー”。斎藤庸裕記者がコラム「Nobu's Eye」でド軍の勝負強さを探った。

   ◇   ◇   ◇

4-3の9回無死二塁。1ボールからの2球目。遊撃手ベッツはストットのバントの構えを見た瞬間、三塁へ全速力で走った。「やるか、やられるか。もし同点にされたら流れが完全に相手に行ってしまう。やるべき時だと思った」。三塁側のバントをダッシュして処理したマンシーから送球を受け、三塁で二塁走者をタッチアウトとした。

ベースカバーに早く動いてしまえば、守備シフトを打者に察知される。センター方向のヒットゾーンが広くなり、ヒッティングに変更された際にはリスクが高まる。それを防ぐため、ややスタートを遅らせた。ロバーツ監督は「かなり難しいプレーだった。あの瞬間、あれが唯一、勝てるチャンスを生むプレーだった」と称賛。相手の反撃ムードを完全に止めるビッグプレーとなった。

各内野手がフィールドを回るように動くことから米国ではホイール(車輪)・プレーと呼ばれるバントシフト。ベッツは試合後、ベストな動き方が頭にあったことを明かした。

あれは学んだ行動の1つで、ロハスのおかげ。アナハイム(8月中旬のエンゼルス戦)でやったことがあって、彼に「どのタイミングがいいのか」と聞いたんだ。「イチかバチかの場面だ」って言われたよ。

守備の名手ロハスと意見交換し、次の機会を待った。その準備がポストシーズンの大舞台で生きた。

ド軍はチームの戦略として、サインプレーで相手のスキを突くことが多々ある。6月5日のメッツ戦。1点ビハインドの6回1死二、三塁から左打者を三振に打ち取ると、捕手スミスが三塁ベースカバーに入ったロハスに送球し、絶妙なタイミングで三塁走者をタッチアウトとした。チームは最終的に逆転勝ち。ロバーツ監督によると、フィールド・コーディネーターのゲーレン・コーチの手柄だったという。同コーチはよく、ベンチから捕手にサインを送っている。その上で捕手と内野手が連係し、どうやってプレーを完成させたのか。ロハスは当時「申し訳ないけど、言えない」と語っていた。つまり“秘密のサインプレー”だった。

この日のバントシフトも、投球前に捕手のスミスはベンチの方を向いていた。事前に内野陣が集まり、ベッツの動きも共有した。ギャンブルかつ周到な準備で1点を防いだチーム戦略。試合後、ロハスは「スプリングトレーニング(春キャンプ)でこういう練習をしても、それを使う場面がないこともある」と語った。もしもの時に備えた連係プレー。ここしかない大一番で成功させた。

【動画】マンシーの猛チャージ!リードを死守するビッグプレー

ドジャース・マンシー(9回のバントシフトについてESPNに)「ムーキー(ベッツ)がすぐに『これをやらなきゃ』と言った。彼の野球IQと直感だ。全員もそう思っていたが、真っ先に声を上げた。大一番を経験している選手が多く、こうしたプレーの経験も豊富。監督はすぐに了承してくれた」

ドジャース・ロハス(ベッツについて球団公式サイトで)「彼はショートとして完全体に近づいている。試合状況を理解し、二塁走者の動きも読んでいた。あの場面であのプレーを指示したのは本当に見事。正しいタイミングで正しいプレーを選んだ。実行も完璧。信じられないよ。僕もメジャーで12年プレーしてきたけど、彼は日々進化し続けている」

ドジャース・フリーマン(9回2死一、三塁、最後の二ゴロで、それたワンバウンドの一塁送球を必死に捕球)「幸運にも球を捕れてベースを守れた。試合後(心労で)『僕の白髪は耳の横まで来てるかも』と(妻の)ローレンに言ったよ」

◆シーズン中に完成させたホイール・プレー 8月13日の敵地エンゼルス戦、5-4の8回無死一、二塁。エ軍の打者ムーアが早い段階でバントの構えを見せると、遊撃手ベッツは三塁へダッシュ。一塁側へ転がったバントの打球を一塁手フリーマンが捕球し、三塁ベースカバーに入ったベッツへ送球した。二塁走者トラウトを三塁で封殺。ベッツは右腕エンリケスの投球前に動き始めており、ややタイミングが早かった。

勝負を分けた9回裏ドジャースのバント処理、里崎智也氏が指摘する「日本ならしない」選択とは