巨人阿部弾、ボテボテ安打予告が黒田200勝阻止

6回表、右前適時打を放った阿部は塁上で笑顔。手前はマウンドに集まる広島の選手たち

<広島0-6巨人>◇13日◇マツダスタジアム

 巨人阿部慎之助捕手(37)が「男気(おとこぎ)」で広島黒田の金字塔達成を食い止めた。日米通算200勝王手の右腕に2回に5号先制ソロ、6回2死三塁では一塁線のゴロがイレギュラーする幸運な適時打を放った。加勢した打線が7回途中まで6得点を奪い、KOした。チームも首位広島との前半戦最後の2連戦で1勝をもぎ取り、10ゲーム差の2位で後半戦に希望をつないだ。

 予告とは違った。2回、黒田の初球、高めの142キロを完璧に捉えた。真芯に近く、打球に角度がつかない。それでも低弾道の一打は伸び、右中間席前列に飛び込んだ。地元で200勝達成を願い、高揚する赤きファンが静寂につつまれる。「いい感触だけど打球が低かったので入って良かった。シ~ンとなっていたね」。黒田からの本塁打は04年4月16日以来。当時は21世紀初の6試合連続本塁打で敵地ファンの喝采も呼んだが、この日は痛快なヒールを演じた。

 熟練の右腕をどう攻略するか。広島への移動日の11日、「ない」と即答した。だがクリームたっぷりのコーヒーを飲みながら糖分が脳内を巡るとイメージが沸き上がった。「傷の深いヒットがどれだけ打てるか。会心の当たりよりポテン、ボテボテのヒットとかはダメージがある。捕手から見ても会心は切り替えられるけど、打ち取った当たりは傷口が深くて残るものだから」。今季初対戦の第1打席は傷口を広げるどころか、一刀両断だった。

 予告を遂行したのは6回。無死二塁から坂本が犠打を決められず、長野も倒れて2死三塁。内角カットボールに食らいつき、一塁線へゴロを放つとイレギュラーし、2点目を生む幸運な適時打となった。“傷の深いヒット”を受けた黒田を村田の2ランなどで7回途中でKO。仲間をフォローし「大きかったと思う」と実感した。

 黒田と同じく、伝統球団の先頭を走ってきた阿部にも男気がある。6回2死一塁で新井を迎えた田口には「球種とか外のスライダーとか、いろいろ使ってみろ」とマウンドで幅を持たせた。手帳に名言集から引用した一節を書き写している。何度も読み込み、赤ペンでラインを引っ張って心に残った名もなき人の言葉。「リーダーたる者は組織の中で常に周囲に目を配らなければいけない」。特別なフレーズではないが行動の基盤となっている。

 前日の初戦を落とし、敗れれば96年に覆した11・5ゲーム差のメークドラマの一線を越えていた。高橋監督は「予想されていた雰囲気だったが、慎之助の本塁打でうまく変わった。6回も粘りがああいう当たりになった」と奮闘をたたえた。阿部が瀬戸際のチームを救った。【広重竜太郎】

 ▼巨人阿部が黒田から本塁打を放ったのは02、03、04年の各1本に次いで12年ぶり4本目。04年4月16日の1発は、当時セ・リーグ4人目の6試合連続本塁打となった。阿部が本塁打を2本以上打った投手は80人いるが、12年ぶりは最長ブランク。過去は朝倉健太、中田賢一、新垣渚の各7年ぶりが最も長かった。

 ◆巨人の大逆転V 長嶋監督の96年、7月6日時点で首位広島に最大11・5ゲーム差をつけられる4位に沈んでいたが、7月以降勝ち星を重ね、広島の失速もあり逆転優勝した。差をつめていく途中で、長嶋監督が「まだまだ分からない。メークドラマを演じてみせますよ」と予言。メークドラマは同年の流行語大賞に選ばれた。08年には7月9日時点で阪神から13ゲーム差をつけられたが、9月の12連勝などでセ・リーグ史上最大ゲーム差の逆転V。