巨人岡本、考えすぎない 原点立ち返り3度目マルチ

同僚とカメラに向かって笑顔を見せる巨人岡本(左)(撮影・菅敏)

 【サントゥルセ(米自治領プエルトリコ)7日(日本時間8日)=為田聡史】巨人岡本和真内野手(20)が、等身大で野球と向き合う。ウインターリーグが行われているプエルトリコに派遣中で、カロリーナの一員としてサントゥルセ戦に出場。現地入り後、打撃成績が伸び悩んでいたが、この日は出場26戦目で3度目のマルチ安打を放った。カリブ海に浮かぶ島で、原点に立ち返りつつある。

 カリブ海の潮風に乗り、岡本が成長を体現した。第1打席の2回1死一塁。カウント0-2からフルカウントまで持ち込み、外角へのツーシームを中前に強い打球をはじき返した。伏線がある。「こっちにきて内角の膝元、胸元を厳しく攻められる。工夫しながら1打席1打席を立っている」と、ボックス内で立ち位置を目まぐるしく変えた。

 「前に立てば緩いボール、抜けるボールで攻めてくる確率は下がる。最初に速いボールを見ておけば楽になるので」。18・44メートルの攻防で主導権を得る策を講じている。4回1死一塁の第2打席は、内寄りのカットボールを左前へ落とした。現地入り後、25試合で打率2割1分、本塁打ゼロと苦しんだが、3度目のマルチ安打をマークした。「自分ではなく相手捕手を考えさせることができている」と自信をのぞかせた。

 当初は不振が続き不安に襲われた。見かねた捕手のバスケスから「野球って難しいスポーツだろ? 考え過ぎて、お前はもっと難しくしてしまっている」と指摘された。続けて「日本のドラフト1位として堂々とプレーしていい」。半信半疑の心中を見透かされた。

 岡本は「シーズン中も同じだった。勝手に難しく考えて打席を無駄にしていた。評価、結果にとらわれ過ぎていた。野球そのものだけを真っすぐに考えたのは中学生以来かもしれない」と気づいた。思考を止めたわけではなく、自分主導で考えるようになった。

 「周りからどう見られるかではなく、単純に野球がうまくなりたい。プロに入る前の感覚を思い出してきた」。不安げな表情はない。世間から騒がれた“怪童”としてではなく、純粋に野球選手として着実で大きな1歩を実感している。