日本ハム大田 サヨナラ打生んだ「巨人との違い」

サヨナラ打を放った大田(中央)は、ガッツポーズしながらナインに水をかけられる(撮影・山崎賢人)

<日本ハム2-1ロッテ>◇3日◇札幌ドーム

 新天地で野球人生をかける男の一打で最下位脱出だ。日本ハム大田泰示外野手(26)がロッテ5回戦(札幌ドーム)でプロ初のサヨナラ打を放った。9回無死満塁、ロッテ守護神益田から中前に運んだ。昨オフ、巨人から交換トレードで日本ハムへ移籍した。お立ち台では開口一番で「幸せですね…はい」と笑顔。大仕事を果たして、チームを6カードぶりの勝ち越し、そして4月6日以来の5位に浮上させた。

 びしょぬれになった「ハッピーイエロー」のユニホーム姿で、大田がお立ち台に立った。笑顔の並ぶ超満員4万1138人が詰めかけたスタンドを見渡した。左脇腹痛で開幕から出遅れた男は「初めまして、大田です。トレードで来ました。ファイターズの戦力になれるよう、精いっぱい頑張っていきます」と、声を張り上げた。

 9回無死満塁の場面も「悪いイメージは1個もなかった」。直前の田中賢の敬遠に「だろうな、と思った」と腹をくくった。外角へ落ちていく変化球に食らいついた。打球は前進守備の二遊間を抜けた。プロ9年目で初のサヨナラ打。一塁を回った直後、右膝をついて右拳を突き上げた。今までかける側だったペットボトルの水を、気持ち良く浴びた。

 転機のトレードに周囲は覚醒を祈っていた。父幹裕さん(58)は「とにかくノビノビとプレーしてほしい」と願った。昨季までドラフト1位で入団した巨人で、期待されながら伸び悩んだ。大田はその理由を「プレッシャーとの闘いもあった」と振り返る。劇的な一打も、今までなら打てなかったかもしれない。「代打も出されず、以前との違いも感じたし、自信も付く」。たくましく、生まれ変わりつつあった。

 栗山監督には高校時代から注目されてきた。試合後は「もっともっと成績が残るバッターだと思っている」と、あえて注文を付けられた。期待度は極めて高い。大田にも、覚悟がある。「結果を出してファイターズの一員になるのもそう、気持ちも全部ささげるつもりでやっている。チャンスをくれたファイターズとジャイアンツに感謝しないといけない」と野球人生をかける。チームを最下位から脱出させた。上位浮上へ、挫折を知る男の強さが、カギになる。【木下大輔】