筒香が間を制す コーチ助言で甦る滞空時間長い2号

DeNA対ヤクルト 5回裏DeNA無死一、二塁、左中間に3点本塁打を放つ筒香(撮影・江口和貴)

<DeNA6-1ヤクルト>◇5日◇横浜

 DeNA筒香嘉智外野手(25)が、子どもたちに夢を与える大きな放物線で、本拠地1号を運んだ。5回に左中間への2号3ランでヤクルトを突き放した。4月27日の阪神戦で打った今季1号の弾丸ライナーとは打って変わって「こどもの日」に満員御礼のスタンドへ、アーチを描いた。その軌道に、筒香の意思が込められていた。投げては井納翔一投手(31)が1失点完投で今季初勝利。投打の主役の活躍でチームは2連勝となった。

 本拠地のダイヤモンドを、ゆっくり、ゆっくりと回って帰ってきた。筒香がついに放ったホーム初アーチ。満員のスタンドが待ち望んでいた主砲の1発が3ランとなった。今季初のお立ち台に立つと平然と言った。「普通です。自分の成績よりチームが大事。自分のことはどうでもいい」。淡々とした口調にスタンドが沸く。それだけ待ち望まれていた軌道は、筒香の意思を受けるかのような大きな放物線を描いた。

 勝負の間を制した。「勝負事は間が重要。相手との間、自分との間、そこがガチッと合えば結果にも出ると思う」。5回にロペスが四球で歩かされ、次打者席から打席に入るまで約32秒かけた。ほとんどの打席で平均20秒かけずに入るところを1度素振りをして、ゆっくり、ゆっくりと歩を進めた。打席に入ってからもゆっくりとルーティンに入る。1つ1つの動作を丁寧に、構えるまで31秒。合わせると1分以上の時間をかけ、打撃に集中した。

 92打席目にして放った4月27日の阪神戦での弾丸ライナーによる1号は、決して納得がいくものではなかった。滞空時間の長いアーチこそ、スラッガーの真骨頂。「無意識だったけど、コーチからアドバイスを受けて、自分でも感じた」。打ちたい気持ちがリズムも自然と早めていたことを指摘され、助言を真摯(しんし)に受け止める。そんな柔軟な心で打ったビッグアーチだった。

 データがその心を物語った。この日から、球団が新たな取り組みを開始。本塁打に限り、ボールトラッキングシステムによるデータ数値が公開された。打球角度は35度と、昨季のチーム平均の30度に比べ高く上がった。打球速度は159キロで、高さは33メートルだった。こどもの日に描いた放物線。「僕が子どもの頃、ずっとプロ野球選手に憧れていた。今、そういう責任が選手としてある。夢とか、憧れの選手になりたいと思ってもらえたらうれしい」。そのアーチに、子どもたちの夢を乗せる。【栗田成芳】