阪神高山、左腕だって大丈V打 意地のバルデス撃ち

8回裏阪神1死二塁、中越えに勝ち越しの適時二塁打を放つ高山(撮影・田崎高広)

<阪神2-1中日>◇17日◇甲子園

 若手の生き残り競争が、虎の快進撃の原動力や! 阪神が、左腕先発のためスタメン落ちした高山俊外野手(24)の勝ち越し二塁打で4連勝。貯金を12として、交流戦前のリーグ戦勝ち越しを決めた。8回の守りから高山を左翼に入れ、好調な中谷将大外野手(24)をベンチに下げた金本知憲監督(49)の采配もズバリ的中。2位広島との差を最大の2・5差に広げた。やることなすこと、うまくいく猛虎。このまま独走しそうなムードが漂ってきた。

 金本阪神が「独走」の離陸態勢に入った。若い力がこの日も推進力になった。8回裏2死二塁。途中出場の高山が打席に入る。初球だ。左腕バルデスの直球をとらえた。ライナー性の打球が中堅手の頭上を越した。「集中して、打席に入れた結果が初球からだったので、よかったと思う」。決勝のタイムリー二塁打に、ベンチも総立ちで盛り上がった。

 5月は10勝2敗と破竹の快進撃が続く。若虎の競争意識が日替わりヒーローを生む。前夜は先制3ランの中谷だった。この日は、その中谷が左腕対策で左翼に就いた。高山がベンチスタートだった。好投のバルデスを一塁側からじっと見つめた。そしてスタメンの同僚に、“取材”で聞いて回った。「準備はしていた」。左対左で対決の可能性は低かったかもしれない。それでも1度のチャンスをうかがっていた。

 イニングが進み、首脳陣の「神采配」があった。8回にマテオを起用。延長を見据えれば、9番では打席が回ってくる。金本監督は「中谷を下げてまで」と言った。5番にマテオを置き、9番で高山を使った。その裏、絶好のチャンスで回ってくる。指揮官の頭にふとよぎった。「今日のバルデスはきついか、右の江越…」。その瞬間、矢野作戦兼バッテリーコーチが進言した。「高山でいこう」。その言葉に乗った。ベンチの思惑はピタリと当たった。「矢野コーチのファインプレーですね」。金本監督は笑った。使う側と使われる側が呼吸を合わせ、最高の結果を生んだ。高山は「左右関係なく、ああいう場面で打てたのが、僕にとって大きいかな、と思う」と言った。

 選手のやりくりに苦しんだ昨年から、チームは底上げに成功。二遊間で北條や大和、上本、糸原が争えば、一塁と外野では中谷、高山、原口がしのぎを削る。「毎日、スタメンは悩んでますよ。調子であったり、去年、今年のデータ。守り。基本的には相性とデータ、その日の片岡コーチの直感ですよ」と、金本監督はどこかうれしげだ。2位広島が敗れ、2・5ゲーム差に広げた。4連勝で貯金は「12」。若手からベテラン、そして首脳陣まで、チーム一丸で優勝へとはばたく。【田口真一郎】

 ▼阪神は交流戦開始(30日ロッテ戦)までの勝ち越しを決めた。14年(リーグ戦中断時は25勝19敗)以来、3年ぶり。同年はレギュラーシーズン2位も、CSを勝ち抜き日本シリーズに進出している。