ロッテ連敗にサヨナラ~、涌井9回志願の139球

力投するロッテ先発の涌井(撮影・小沢裕)

<ロッテ4-3楽天>◇19日◇ZOZOマリン

 ロッテが連敗を8で止めた。エース涌井秀章投手(30)が9回3失点と好投。9回に追いつかれて白星はつかなかったが、完投を志願するなどチームを鼓舞する139球だった。打線は延長10回、左翼で先発した3番根元俊一内野手(33)が右前へサヨナラ打。これが10安打目で、連続試合2桁安打なしの不名誉な記録を球団ワーストタイの「18」で止め、今季初めて本拠地のナイターで勝利。チームは今季10勝目に到達した。

 今季初めて、夜のZOZOマリンが歓喜にあふれた。延長10回、1死二、三塁から根元が右前打。10日の楽天戦から続いていた連敗を8で止め、ファンと選手が一体となった「We are ロッテ」のコールが幕張の海に響き渡った。根元は「今日の涌井は本当に気合が入っていた。今日(連敗を)止められなければ、というのはあった」。打のヒーローは、投の立役者に感謝した。

 涌井の気迫あふれる投球が、サヨナラを呼び込んだ。8回。楽天の外国人トリオを打席に迎えると、リミッターを外した。「クリーンアップにつながるところなので流れを引き寄せようとした」。148→149→150キロと、どんどんと球速を上げた。8回を終えて119球。伊東監督も、落合投手コーチも、クローザーの内への継投を考えていた。

 涌井はベンチ裏に戻ると、ロッカー室で落合コーチと目が合った。「行かせてください」。続投を志願した。「連敗を止めることしか考えてなかった。止めるとしたら、1人で投げきることしか考えていなかった。何かを変えなきゃいけない。勝ちに対するところが伝われば」。エースとして背中で示す、若い投手陣へのメッセージだった。

 9回は野選で1点を失い、同点に追いつかれた。「あそこを1点でしのいだからサヨナラ勝ちにつながった」と、恥じ入るところはない。マウンド上ではポーカーフェースが定番の右腕だが、思いは野手にも伝わっていた。

 涌井は前回登板した12日の日本ハム戦で、1試合6被本塁打とパ・リーグワースト記録を更新した。その後、伊東監督から「どういう状況でもチームを救うのがエースだ」と諭されていた。この日の快投には監督も「こないだのこともあったし、気迫の投球が野手にも伝わった」と手放しでほめた。落合コーチは「相手と戦いながら、ウチの投手にもメッセージを発信してくれた」と、ミーティング通りのストライク先行投球に脱帽した。

 首位楽天をたたき、10日ぶりの勝利を手にした。伊東監督は「1つ勝つ苦しみをあらためて感じた。明日にいい流れをつなげていかないと。今日はちょっと、ゆっくり寝られるかも」。涌井の好投が、すべてのロッテ関係者を笑顔に導いた。これがエースだ。【斎藤直樹】