中日柳プロ1勝 亡き父との約束「父の日」に果たす

中日対西武 プロ初勝利の柳(右)と森監督(撮影・前岡正明)

<日本生命セ・パ交流戦:中日4-3西武>◇18日◇ナゴヤドーム

 父との約束から11年-。中日のドラフト1位、柳裕也投手(23)がプロ初勝利を挙げた。3度目の先発で強力な西武打線に7回3失点。持ち味である粘りの投球が実り、ウイニングボールを手にした。明大では東京6大学リーグ23勝、大学日本代表のエースも務めた即戦力右腕。右肘痛で出遅れていたが、本領を発揮し始めた。亡き父にささげる、父の日の記念星だった。

 出迎えの列に加わると、森監督から先頭に促された。先輩たちに頭を下げながらタッチ。初のお立ち台では「野手の方が点を取ってくれた。頼もしかった」と感謝を忘れなかった。

 調子はよくなかった。友利投手コーチは「でも試合の中で修正した。普通の新人よりワンランク上」。それが柳の真骨頂。初回に1点取られたが「次の1点をやらないようにした」。その後の1死二、三塁は中村を空振り三振、栗山を二ゴロ。その裏に打線が逆転してくれた。

 3-1の6回に暴投などで同点にされた。だが、「一番力を入れた」と栗山を二ゴロ、メヒアを二飛。ともに得意のカットボールで打ち取った。7回を3人で片付けると、代打を出された。その裏、再び打線の援護を受け、勝ち越し。勝利投手の権利が生まれた。

 父の日だった。「こういう日に勝たせてもらって、何かあるのかな」。小学6年の夏、交通事故によって父博美さんを37歳で亡くした。「僕はプロ野球選手になります」-。葬儀であいさつをした。野球を教えてくれた父との約束を果たした今、柳の思いはまた強くなっている。「応援してくれる人に恩返しをするために頑張る。自分を高めることが恩返しになるから」。

 それでもプロ入り後は苦しかった。3月に右肘痛を発症。「何やってんだと。悲愴(ひそう)感があった。でもケガした時期があってよかったと思えるようにした」。折れそうな心を奮い立たせ、地道なリハビリをこなし、3度目の先発でやっと初白星にたどり着いた。

 チームを連勝に導き、交流戦の最後を締めた。森監督は「精神的に崩れることがない。ほかの新人とは違う」と絶賛した。柳は「先発投手としてスタートを切れたと思う。満足せず、上を目指したい」と力強く躍進を誓った。【柏原誠】

 ◆柳裕也(やなぎ・ゆうや)1994年(平6)4月22日、宮崎・都城市生まれ。横浜で甲子園に3度出場。明大で3年春からエースを務め、4年春秋にリーグV。同年の明治神宮大会も制した。東京6大学で通算23勝、338奪三振。16年ドラフトで2球団から1位指名を受けて中日に入団。5月23日のDeNA戦で初登板。今季年俸は1500万円(推定)。180センチ、83キロ。右投げ右打ち。