<ヤクルト2-8広島>◇8日◇神宮
振り抜いたバットから手を放すと、広島鈴木誠也外野手(22)は打球の行方を最後まで見届けずに一塁へ走りだした。リードを2点に広げた3回。ヤクルト石川の内角球を左翼席中段まで運んだ。敵地神宮の左半分を真っ赤に染めたファンから大歓声が注がれた。しかし、ダイヤモンドを回る若き4番に笑みはなかった。
5試合ぶりリーグ4位の17号も、自分の打撃に納得がいかない。2打席連続三振を含む3三振。鈴木は報道陣の質問にかぶりを振り、無言を貫いた。1発を打った喜びよりも、自分の打撃ができないいら立ちの方が強い。6月9日時点で3割2分2厘あった打率は、2割9分まで落ちてしまった。
もがき続ける中で、前4番が作った流れに乗った。前日7日、新井が決勝の逆転3ランを放った。鈴木と同じく若くして4番を務めた先輩は頼れる相談役だ。「3番も5番も打たせてもらったことがあるけど、やっぱり4番は違う。4番目じゃない」。これまでにない重圧を背負う22歳は、新井から「自分で乗り越えるしかない」と声をかけられる。ただ、言葉だけでない。劇的弾の背中でも4番道を伝えられた。前日は5打数無安打と結果を出せなかったが、この日は試合を決定づける1発で、先輩を手本にした。
チームは4発の大勝で、昨季よりも5試合早い50勝一番乗り。過去にリーグ一番乗りした5シーズンのうち4度優勝と連覇へまっしぐら。首位快走のチームの中、鈴木は1人もがいている。4番の重みを痛感しているからこそ、状態の上がらない現状がもどかしい。
だが新井はこうも言ってくれた。「乗り越えたら何かが見えるはず」と-。真の4番へ。連覇へ進むチームとともに、若き4番は前に進んでいく。【前原淳】
▼広島がリーグ最速で50勝到達。広島のセ・リーグ50勝一番乗りは、75、79、80、96、16年に次いで2年連続6度目。79試合目で50勝は、80年78試合に次いで球団史上2位のスピード到達。
▼広島は前日7日に続いて4本塁打。2試合連続で4本塁打以上は、昨年の日本ハムが5月28、29日に記録して以来。広島では02年5月1、3日以来15年ぶり7度目。今日の試合でも4本塁打以上だと、球団史上初めてとなる。