<巨人3-2ヤクルト>◇10日◇東京ドーム
九州男児は背中で語る。巨人長野久義外野手(32)が同点の7回に決勝の7号ソロを放ち、チームに3カード連続の初戦勝ちをもたらした。5月中盤まで打率1割台と苦しんだが、ここ6試合は27打数10安打の打率3割7分、4本塁打と復調。出身地の佐賀に近い九州北部で発生した大雨被害にも胸を痛めていた選手会長が、快音を鳴らして皆を前向きにさせる。
長野は黙って試合を決めた。同点で迎えた7回2死走者なし。甘く入ったスライダーをかち上げると、高々と上がった打球がレフトスタンドで弾んだ。「あ、入ったー、と思って。うれしかったです。とにかく出塁することだけを心がけていました」。淡々とダイヤモンドを回りベンチへ戻ると、大喜びの田口らから次々に祝福を受けた。2試合連続の7号ソロが貴重な決勝点となった。
この前半戦、誰よりも勝敗の責任を背負ってきたかもしれない。お立ち台に上がっても「最初、全然打てていなくて迷惑をかけた。まだ打たないと、取り返せない」と自分を責めた。
ちょうど2カ月前の5月10日。今季1号を放った阪神戦は、勝利後も口を固く閉ざした。ロッカー室を出ると足早に帰路を進み、報道陣の問いかけには全て申し訳なさそうな会釈だけを返した。理由は「どうしても、しゃべれなかった」。開幕から思うような打撃ができず、打率は1割台に低迷。チーム、首脳陣、ファンに対する申し訳なさだけが募った。結果1つでは許されないという責任感が、自然と口数を減らしていた。
行動で、結果で示すことを重んじる九州男児。佐賀で生まれ育ち、福岡の筑陽学園に進み甲子園を目指した。九州北部を襲った豪雨の被害に無関心ではいられなかった。「友達もいるし、大変だったみたいです。明日はヤクルトの選手にも手伝ってもらって活動をします」と立ち上がった。今日11日と12日、東京ドームでの試合前に募金活動を行う。「少しでも多くの方からのご協力をいただけたら」と故郷を思いやった。
高橋監督は「ずっと軸になってほしい選手の1人。きっちり結果を出してくれるとチームもさらに動きだす」と後半戦も期待をかけた。頼れる選手会長が、バットで背中でチームを引っ張り上げる。【松本岳志】