DeNA今永10勝 制球難もイニング間に重心修正

DeNA対中日 10勝目を挙げたDeNA今永はファンとハイタッチで喜び合う(撮影・山崎哲司)

<DeNA4-1中日>◇17日◇横浜

 DeNA今永昇太投手(23)が、2年目で初めて2桁勝利を挙げた。初回こそ制球を乱したが2回以降は立ち直り、中日打線を7回6安打無失点に抑えた。チームの左腕で10勝は05年土肥(西武投手コーチ)以来で、生え抜きでは02年吉見(現打撃投手)以来15年ぶりの記録。これで後半戦は自身5連勝となり、2位阪神追撃の原動力だ。

 2年目の修正力が生きた。今永の立ち上がりは、先頭打者京田に3球連続ボール。「ちょっと違った緊張感があった」。安打を打たれた後、2番荒木を併殺打に打ち取ったが、3番大島にまた4球連続ボールで四球。「どうなることかと思った」が、4番ゲレーロは中飛で命拾いした。

 2回までのイニング間に立て直した。「嶺井さんと話して、ミットだけを見て投げた」。軸となる左足の重心が「目には見えないぐらいかもしれないけど」外側に流れていた点を修正。直球が威力を増し、変化球も切れを増した。「去年だったらリリースしか意識してなかったから直せなかったと思う」。プロでの経験と助言を生かした。

 今年4~5月、4試合白星から遠ざかった。「足を上げたら全部バラバラだった」とフォームが崩れ、常にクイックで投げるしかなかった。当時、木塚投手コーチからティー打撃を勧められた。投球の重心、体重移動を確認するためだ。「今までは体の中で、2本の軸で足を上げていたが、1本で意識するようになった」。ティー打撃は今も続け、この日に生きた。

 繊細さだけでなく、大胆さもある。7回に1死一、二塁の危機を迎えた。「中途半端なボールではなくしっかり」と腕を振ったチェンジアップで三塁ゴロ併殺。侍ジャパン流の危機回避方法だった。WBCのオーストラリア戦。制球を乱した後にど真ん中に投げ込み、ピンチを脱した中日岡田が、公式戦でも捕手を真ん中に構えさせていた。「そこに原点があるような気がした」。これまでは「打たれたらどうしようっていうのがあった」が、逃げない意志こそが最強の武器だと気が付いた。

 長年、左腕不足だったDeNAにとって待望の2桁勝利だ。これまで「通過点」と話していたが、実は「8月中に絶対10勝すると、口には出さずに決めてました」と告白。今後は目標を16勝に上方修正した。【斎藤直樹】

 ▼今永が今季10勝目を挙げた。DeNAの左腕が2桁勝利を記録したのは、05年に10勝した土肥以来、12年ぶり。06年以降に左腕の2桁勝利がいないのはDeNAと楽天だけだった。左腕の2桁勝利は今永でチーム10人目(21度目)となったが、プロ2年目までに10勝は53、54年権藤、58、59年鈴木隆、02年吉見に次いで4人目になる。今季のDeNA左腕は今永10勝のほかに、浜口7勝、石田4勝、砂田1勝の合計22勝。過去にDeNAの左腕10勝コンビは91年野村15勝と岡本透11勝しかないが、浜口も10勝できるか。