阪神福留サヨナラ犠飛つないでくれて「たまたま僕」

阪神対広島 9回裏阪神1死満塁、サヨナラ中犠飛を放ちナインから手荒い祝福を受ける福留(右)(撮影・上田博志)

<阪神5-4広島>◇17日◇京セラドーム大阪

 虎の悪夢の連敗を3で止めたのは、ベテラン福留孝介外野手(40)だった。広島20回戦(京セラドーム大阪)で、同点の9回1死満塁でサヨナラ中犠飛。敗戦とともに故障者続出で危機的状況に陥っていたチームに、3打点の活躍で白星を運んできた。首位広島に一矢。敗れれば、3位DeNAに0・5差に迫られていたところだったが、踏みとどまった。

 珍しく両手を突き上げて喜んだ。4-4で迎えた1死満塁。3番福留が1ボールから中田のフォークをすくい上げた。浅い位置で中堅丸が捕球すると三塁走者俊介がスタート。送球がそれる間に本塁になだれ込んだ。「三塁走者が俊介だったし、楽な気持ちで打席に入れた」。一塁側ベンチから阪神ナインが福留目掛けて飛んでくる。40歳が歓喜のシャワーを浴びた。

 「選手全員が3連敗しないという強い気持ちで臨んだ。たまたま僕が決めただけ。みんながつないでくれたから」

 福留のバットからことごとく得点が生まれた。初回は見逃し三振に倒れたが「あのふがいない三振をしたので取り返そうと思った」。続く3回には左前適時打、5回1死一、二塁の場面では変化球を右翼線に運ぶ適時二塁打。4打数2安打3打点と暴れ回った。

 どんな状況になっても虎のキャプテンはチームメートへの目配りと気遣いを忘れない。前日16日には82日ぶりに1軍のマウンドに登板した藤浪が序盤から乱調。4回、菊池に死球を与えて両軍がにらみ合いになった。その瞬間、福留は右翼からマウンドまで直行。伏し目がちの藤浪に近づきカツを入れた。

 お立ち台から降りて報道陣に囲まれた福留は「俊介にいい誕生日を迎えてもらおうと思ってね」と笑った。遠征先でも食事をともにするなどかわいがっている後輩の30歳の誕生日を祝福した。9回福留が決勝犠飛を放つ直前に左前打でお膳立てした北條を見つけると「まあ、今日は北條のおかげじゃないかな」と言ってまた笑った。

 絶対に負けられない首位広島との3連戦だったが、初戦から2連敗。嫌なムードが流れた。それを断ち切ったのがキャプテンの気迫だった。金本監督は「あの場面になると、ほぼ決めてくれるだろうな、と確信がありました」と信頼を口にした。首位広島とのゲーム差は9・5。現実は厳しいが、ファイティングポーズを下ろすわけにはいかない。福留がそれを示した。【桝井聡】