広島安部V弾でM12!ドリス冷静分析直球狙い撃ち

9回裏広島1死二塁、逆転サヨナラ2点本塁打を放った安部は、跳び上がる玉木コーチ(右)らチームの歓喜を背に指を突き上げ一塁を回る(撮影・宮崎幸一)

<広島8-7阪神>◇5日◇マツダスタジアム

 広島が劇的なサヨナラ勝ちで、今季4度目のM点灯だ。安部友裕内野手(28)が1点を追う9回1死二塁、ドリスから逆転サヨナラ2ランを放ち、マジック「12」をともした。9回に阪神福留孝介外野手(40)に一時は逆転となる2ランを浴びた直後の攻撃で、本拠地のファンを歓喜させるアーチを夜空にかけた。広島の最短Vは12日。

 155キロを安部が上からたたきつぶした。夜空に高く、思いを乗せた打球が舞い上がった。「越えろと。入るとは思わなかった」。覇気も乗り移り、右中間の最深部に消えた。自身初のサヨナラ弾は逆転サヨナラマジック点灯2ラン本塁打。水を持って待つナインに迎えられ、水浸しでホームを踏んだ。お立ち台では「最高です!」を3度繰り返し、真っ赤なマツダスタジアムと興奮を共有した。

 冷静にバットを握っていた。これまでは口癖のように使う「覇気」が先行し、冷静さを欠く場面が多かった。しかしマウンドに立つ阪神ドリスの姿を「ワンバウンドも多いな」と分析。ゾーンを絞り「高め、高め、高め」と言い聞かせた。そしてカウント2-1からの4球目。「彼の一番いい球だから」と直球1本でスイング。集中していた。

 打てなかった日や失策の翌日、安部は独り言が増える。言い聞かせて身につけた「覇気」同様、呪文を唱えて自分をコントロールする。「今日は今日の風が吹く」や「フラストレーションでも集中」、「ビーアンビシャス」の日もあった。誰に言うわけでもない音量で、ひたすら自分に言い聞かせ、すり込んでいく。体得完了の「覇気」に、こうして「冷静さ」を加えた。

 安部は3回にも勝ち越しの左前適時打。7回にも勝ち越しの右前適時打を放っていた。3安打5打点の活躍。緒方監督は「安部の覇気の一打を見て、投手も野手も頑張ったかいがあった。はっきり言って打つとは思わなかったけど」と冗談めかしながら「頑張っているし、大きく成長している1人だとあらためて感じさせてくれた」と目を細めた。

 3度リードしながらも追いつかれ、9回に追い越される苦しい試合をもぎとった。4連勝で優勝へのマジック12が再点灯。安部は「チームは誰も浮かれてはいない。とにかく明日の試合をとりたい」と締めた。2位阪神との直接対決初戦は劇的勝利。流れは完全に広島だ。覇気の一打が広島を一気に加速させる。【池本泰尚】

 ▼広島安部が逆転サヨナラ本塁打。安部のサヨナラ打は4月1日阪神戦(マツダスタジアム)で二塁内野安打で決めて以来2度目で、前回もドリスから。逆転サヨナラ打は初めてだ。1試合5打点は自己最多。

 ▼広島は今季4度目のマジック点灯。広島のマジック4度点灯は84年以来2度目。前回は9月22日に4度目のマジックを点灯させ、その後消えずにリーグV、日本一になった。現日程の最短V決定日は12日。