待望先制弾のDeNA宮崎がひげを剃らない決意

5回裏DeNA無死、宮崎は先制左越えソロ本塁打を放つ(撮影・松本俊)

 九州男児が徳俵で爆発した。DeNA宮崎敏郎内野手(28)が会心のひと振りで打線に火を付けた。5回に左翼席上段にたたき込む先制アーチ。8回の貴重な適時打を含む3安打2打点の大暴れで、同じ佐賀出身の後輩、浜口の快投に応えた。福岡出身の高城俊人捕手(24)も7回にソロ本塁打を放つなど攻守で活躍。負けたら終わりの勝負をものにし、下克上へ息を吹き返した。

 

 男は黙ってバットを振る。先頭で迎えた5回。宮崎は2球目の内角ツーシームをしばき上げた。均衡を破るソロアーチ。シリーズ4戦目、待望の先制点だった。「バッテリーが頑張っていたので、何とか塁に出ようと思った。いい形で点が入って、勢いがついたと思う」とうなずいた。

 仕事を忠実に遂行した。打席直前のベンチ前での円陣。ストライクを取りにくる直球をどんどん振っていこうと指示が飛んだ。「それまでは(球を)見すぎていたのかも知れない。それ(指示)がいい方向にいきましたね」。懐に入ってくる速球を、積極性と確実性を兼ね備えたリーグ首位打者の打撃で捉えた。「うまく反応出来たかな、と。(打撃は)いい方向に向いていると思います」と手応えを口にした。

 佐賀・唐津市出身。母からの言葉を忠実に守り、大舞台に立つ。「あなたは忘れやすいから、気付いたことは書き留めなさい」。プロ入りから、プレーで気になった点はメモにとり続ける。自分の打撃のバロメーターは右膝の内側にどれだけ力が入っているか。そのチェックポイントを読み返し、大一番の1発につなげてみせた。

 昨年末の決意を忠実に守り続ける。昨オフの契約更改時。ひげを蓄えて今シーズンに臨む決意を口にした。「助っ人外国人風で」と笑いながら続けた。「2軍では(ひげは)禁止なんですよ」。ここまでケガに泣き、2軍降格を繰り返してきた。ひげは1軍で戦い抜く覚悟の表れ。この日「今年は1回もそってないですよ」と明かした。

 3連敗を喫し、負けたら終わりの戦いで存在感を示した。「シーズン中から(負けても)明日やってやるぞと切り替えて、ここまで戦ってきた。まだ日本一になったわけじゃない。1勝したことで、また明日です」。男は黙して、バットで語る。仕事に徹する力強い九州男児が、下克上へ押し上げる。【佐竹実】

 ▼宮崎、高城がともに本塁打を含む3安打。宮崎は第2戦に続いての本塁打で、DeNAの選手がシリーズで2発は初めてだ。また、本塁打を含む猛打賞は、15年第3戦で3本塁打の山田(ヤクルト)以来で球団初。同じチームで複数の選手が記録したのは、11年第3戦のソフトバンク(多村、細川)以来6年ぶり7度目となった。また高城は、今年のレギュラーシーズンで29試合、61打席で本塁打0。シーズン本塁打なしの選手が日本シリーズで1発は、15年第4戦の細川(ソフトバンク)以来15人目。