中日育成藤吉、契約更改したけどやっぱり退団します

6月15日のウエスタン・リーグ阪神戦でキャッチボールを行う藤吉

 中日は8日、育成契約選手の藤吉優捕手(21)が退団すると発表した。プロ野球選手としての限界を感じ、球団と話し合いを重ねた末に自主退団を選んだ。西山和夫球団代表は「環境を変えてやり直したいという本人の意思を尊重し、退団を認めました」とコメント。今後はプロ野球から離れ、再出発を図るという。

 藤吉は14年度育成ドラフト3位で秀岳館(熊本)から入団。今季は2軍戦に16試合に出場し31打数4安打、打率1割2分9厘だった。3年目を終えた今オフ、自由契約となったが、球団は今後の成長に期待。11月18日に来季の育成契約を更新したばかりだった。その会見では「死にものぐるいで、支配下を勝ち取りたい」と意気込んでいたが、夢を断念する決断を下した。

 育成選手制度はプロ野球への門戸を広めたかもしれない。中日は05年の育成ドラフト発足から18人と育成契約を締結。そこから矢地、赤田、岸本、近藤、三ツ間5選手が支配下登録を勝ち取った。育成出身の巨人山口鉄や松本が新人王に輝き脚光を浴びたが、狭き門であることは間違いない。

 支配下と育成では環境面で大きな差がある。最低年俸は支配下選手の440万円の約半分の240万円と低い。入団時に契約金はなく支度金が数百万円支払われるのみ。藤吉の今季推定年俸も300万円だった。低条件でもチャンスをつかもうと、プロへ飛び込む選手は多い。だが、大きなレベルの差を突きつけられる。今回のように現実的な選択をするケースもある。

 中日は昨年も育成5位で入団した呉屋開斗投手が退団を申し入れ、1年でプロ野球を去った。2年連続での自主退団者。制度を見つめ直す時がきているのかもしれない。【宮崎えり子】