巨人3位大城プロ1号 甲子園準Vで得た勝負度胸

巨人対ヤクルト 8回裏巨人2死、代打大城はヤクルト5番手の田川(左)から右越えにソロ本塁打を放つ(撮影・小沢裕)

 野性味あふれるアピール弾だ。巨人ドラフト3位の大城卓三捕手(25=NTT西日本)がヤクルトとのオープン戦で“プロ1号”を放った。8回2死、代打で打席に立ち、カウント3-0から田川の137キロ直球を右翼スタンドへと運んだ。初球からスイングする積極的な打撃で前日3日のオープン戦でも2安打しており、2戦合計で3打数3安打。2日に1軍合流したばかりの若武者が1軍定着へ猛アピールだ。

 狙った獲物は逃さない。大城は目をぎらつかせた。8回2死、カウント3-0。直球でストライクを奪いにくると確信した。投手田川へにらみを利かせると誘い込まれるように137キロ直球が真ん中高めへ。仕留めるだけ。真芯で捉えると打球は右翼席中段へと突き刺さった。わずか一振りで決めた“プロ1号”に「思い切りいきました。(手応えは)ありました」と満足そうにうなずいた。

 戦うための野性的な本能がある。大学時代は1人で焼き肉20人前をペロリ。1軍合流初日の昼食では丼3杯の白米を平らげた。「体重が減りやすいので」と寮でのおかわりも必須。バットに関しても「扱いやすいと思う」とグリップは細め。でも「正確なグラム数までは分からないです」と自らに必要なものは感覚で把握している。

 好機を逃さず、闘争本能をむき出しにする。「ファームで積極的に打ちにいくのをやっていた。見逃してストライクよりも打ってファウルの方が良い」と好球必打が信条。前日3日のプロ初安打も代打から甘めの初球を中前にはじき返した。続く第2打席も初球ファウルにし、追い込まれる前の変化球を捉えて左翼フェンス直撃の二塁打。2日間で3打数3安打、4スイングで結果を残した。

 経験があるから、勝負どころで動じない。この日は2万7000人の観衆も「無心で考えずにいます」と平常心を貫く。原体験は高校3年だった10年夏。東海大相模で甲子園決勝を戦った。「決勝を戦ったのが大きい。満員の大観衆の中でやったんですからね」と、そこで得た勝負度胸が結果につながる。

 荒々しく仕留めた姿を高橋監督も「3ボールからいったところも良かったし、それを一発で1スイングで仕留める。しかも素晴らしい打球で」と評価した。2戦連続のアピールに成功した大城は「ずっといられるようにしがみついていきたい」と誓う。高ぶらず、開幕1軍という獲物に食らいつく。【島根純】

<大城卓三(おおしろ・たくみ)アラカルト>

 ◆生年月日 1993年(平5)2月11日生まれ、沖縄・那覇市出身。

 ◆リアル“タッチ” 3人兄弟の末っ子だが、双子の兄建二さん(現トヨタ自動車)と東海大相模-東海大と同じ野球歴を過ごす。「一緒にやるのが自然でした」と一卵性双生児で、かなり顔が似ている。長兄の昌士さんも西部ガスで選手。

 ◆華やかな経歴 10年夏に東海大相模で甲子園準優勝。東海大では4年時に全日本大学選手権で首位打者とMVPを獲得して、優勝に貢献した。NTT西日本時代には。社会人BFAアジア選手権日本代表に選出された。

 ◆好きな言葉・食べ物 「一日一生」。東海大相模の門馬監督が言っており「1日、1日を無駄なく一生懸命生きる」と胸にしまう。好物は海鮮もの。好きなすしネタはサーモン。

 ◆サイズ 身長187センチ、体重89キロ。

 ◆家族構成 両親と兄2人。

 ▼ルーキー大城が代打本塁打。オープン戦で本塁打を放った巨人の新人は14年3月10日小林以来で、代打本塁打は01年3月24日ヤクルト戦の阿部以来、17年ぶり。ドラフト制後、本塁打を記録した巨人の新人は15人目だが、81年原、98年高橋由ら6人が公式戦で2桁本塁打をマーク。大城は本番で何本打てるか。