<日本生命セ・パ交流戦:阪神3-6ソフトバンク>◇30日◇甲子園
「日本生命セ・パ交流戦」のソフトバンク戦(甲子園)で阪神鳥谷敬内野手(36)が“再出発”を刻む一打を放った。前日29日に連続試合出場が1939で止まったが、一夜明けた30日同戦の9回に代打出場。ソフトバンク森から右前安打を放ち、背番号1に大声援を送った虎党に応えた。
プロ15年目の意地が凝縮されていた。敗色濃厚の9回1死一塁。「代打鳥谷」がコールされると、甲子園が沸きに沸いた。フルカウントからの7球目だ。森が投げたカットボールが懐を襲う。負けじと押し返すと、右翼上林の前ではずんだ。
クラブハウスへと向かう敗軍の列のなかで、鳥谷は「(声援が)すごかったですね。隼太が出てくれたので何とかつなごうと思っていました」と振り返った。今季は開幕から本調子と程遠く、前日29日ソフトバンク戦(甲子園)で、入団1年目の04年から15年かけて続けてきた歴代2位の連続試合出場が1939で止まった。一夜明けてもプロとしてあるべき姿を貫いた。
前夜は「いつかは止まるものなので。いい時も悪い時も、ケガをしても、使い続けてくれた監督たちに感謝したいです」と話していた。現実を受け止め、最善を尽くした。この日は雨天のため試合前は室内練習場で練習。フリー打撃では鋭いライナーで防球ネットを揺らした。苦渋の決断を下していた金本監督も、厳しい球を打ち返した2026安打目を見届けると、目を細めた。
「引っ張ってのヒットはね。コースも難しいと思うよ、あの球は。練習から違うと思った。『今日はいいな』と思った。期待はしていたんだけどね。ああいう打球を打てるんじゃないかと練習で見えたから」
ひたむきに野球と向き合ってきた。2月の沖縄・宜野座キャンプ。早朝から筋力トレーニングを行うだけではない。通常メニューを終え、タクシーで球場を後にしても、再びジムに足を運んだ。甲子園でのナイターでは午前中から外野を走るのがルーティンだ。グラウンドではなく、客席側の通路を走ることもあった。人目に触れない鍛錬が、揺るぎなき礎だ。決して威張らず、黙々と励んできた。
記録は止まっても、向上心まで消えない。この日も全力で打線をつなぎ、勝機を見いだそうとした。引き揚げ際「再スタートという、あれはないけど持ち場で頑張ります」と言う。2027安打目に向けて、歩を前に進めた。【酒井俊作】