ドラ1候補東洋大150キロトリオ「3人でプロに」

3連覇にちなんで3本の指を立てる東洋大の梅津(左)、甲斐野(中央)、上茶谷

 11日から全日本大学選手権(神宮ほか)が開幕する。東都大学リーグで3季連続の優勝を飾った東洋大は、ドラフト1位候補の「150キロトリオ」の甲斐野央投手(4年=東洋大姫路)、上茶谷大河投手(4年=京都学園)、梅津晃大投手(4年=仙台育英)が、チームをけん引する。7年ぶり5度目の優勝を目標に掲げる3人が、お互いの関係、それぞれの思いを語り合った。

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 入学当初の冗談が、現実に変わった。1年の春、3人がメンバー入りした最初のキャンプでこんな話をした。

 梅津 3人とも右投手で身長180センチ超え。将来「3羽がらす」って騒がれるなと冗談で話してたね。

 上茶谷 でも、3人とも、うまくいくわけないからと言われたけど…。

 甲斐野 うん、エースは3人いらないってね。

 梅津 自分は2人と比べて、まだ全然だけど、3人で注目されて、現実的になってきたのがうれしい。

 周囲が「負けず嫌い」と評するように、3人は入学から互いを意識しまくった。一番は球速だった。

 甲斐野 自分が2年春に最初に150キロを超えたけど、3年夏に梅津が153キロを出したと聞いた時は「マジか」と焦った。

 上茶谷 その時、甲斐野は腰を痛めていたはずやのに、翌日にまた150キロ超えて。前日に、湿布を貼ってくれへん? と言ってた人には見えへんかった。

 甲斐野 湿布貼ってくれてへんやん。アイシングとかって言って、自分の右腕に貼りまくって。

 上茶谷 一番効くやつはちゃんと貼ったから。

 甲斐野 確かに。それはありがとう。でも、次の日の分、なくなったから(笑い)。

 梅津 2人を見てると楽しいよ。上茶谷も甲斐野もオンとオフの切り替えがうまくて、甲斐野は器用で何でもできる。天才だよ。

 休日も3人でスーパー銭湯に出かけ、食事や買い物をともにする。当然、練習もほとんど一緒だった。

 梅津 よく走ったよね。部屋にいると、寮の放送が鳴って「3人、ライトポールに集合」とかね。

 甲斐野 自分だけ呼ばれた時も、上茶谷、梅津の2人も部屋にいました、とか言って巻き込んでね。

 上茶谷 そうそう。うわーとか叫びながら、結局、ちゃんとやるんよね。

 互いの存在を甲斐野は「ライバル」と例え、上茶谷は「自分を成長させてくれる存在」と表現するが、梅津は「良きライバル、良き友人」と言った。

 甲斐野 上茶谷と2人だけやったら、崩壊してたかも。だから、梅津がいてくれて良かった。うまくバランス取ってくれるから。

 上茶谷 梅津はいつも中立。ほんまに優しいし、親心があるよね。パパみたいやもんね。

 梅津 そうかな? 自分は2人が明るくて、救われるよ。自分は生真面目なところがあるけど、リラックスさせてもらってる。

 11日からの全日本大学選手権を経て、その先には秋季リーグ、明治神宮大会、運命のドラフトが待ち受ける。「3人でプロに行けたらいいなぁ」。思いを代弁した甲斐野の言葉に、2人は力強く首を縦に振った。【取材・構成=久保賢吾】

 ◆東洋大「150キロ」トリオの今季 開幕投手を務めた上茶谷が、リーグ単独トップの6勝(防御率2・29)を挙げ、最高殊勲選手、最優秀投手、ベストナインの3冠を獲得した。守護神の甲斐野は9試合に登板して、防御率1・80で救援失敗はなし。梅津は、開幕カードの中大2回戦で先発した後、空き週の練習試合で右足首に打球を受けて、登板を回避。5月29日の亜大戦から再びベンチ入りした。

 ◆上茶谷大河(かみちゃたに・たいが)1996年(平8)8月31日、京都府生まれ。小1から野球を始め、衣笠中では京都レッドベアーボーイズに所属。京都学園で2年春からエース。東洋大では2年秋に1部で初登板し、今春は初勝利を含む6勝。最速151キロ。181センチ、85キロ。右投げ右打ち。

 ◆甲斐野央(かいの・ひろし)1996年(平8)11月16日、兵庫県生まれ。小3で野球を始め、中学時代は軟式野球部に所属。東洋大姫路では1年秋からベンチ入り。東洋大では昨秋初勝利を挙げ、5勝をマーク。最優秀投手とベストナインを獲得した。最速159キロ。185センチ、75キロ。右投げ左打ち。

 ◆梅津晃大(うめつ・こうだい)1996年(平8)10月24日、福島市生まれ。小2で野球を始め、主に投手。秀光中では軟式野球部に所属した。仙台育英では、2年春からベンチ入りし、センバツに出場。東洋大では3年秋に1部で初登板した。最速153キロ。187センチ、92キロ。右投げ右打ち。