ミラクル平石楽天、就任から5戦4勝 強さ戻った

ファンの声援に応える楽天平石監督代行(撮影・野上伸悟)

<楽天6-5日本ハム>◇24日◇楽天生命パーク

 まだまだ! あるぞ! 逆転Vも夢ではない。楽天が、4点差をひっくり返した。同点の8回に田中和基外野手(23)の内野安打で勝ち越し。平石洋介監督代行(38)就任以降、5戦4勝と勝率8割を誇る。このペースで行けば、残り75試合を60勝(15敗)。85勝となり、奇跡の逆転優勝も見えてくる。期待は膨らむばかりだ。

 何かが起こりそう。そんな雰囲気が楽天ベンチに漂う。5-5の8回1死二、三塁。勝ち越しの好機で、嶋が空振り三振に倒れても、逆に盛り上がりに拍車がかかった。次打者・田中は「三振さえしなければ」と内角低めの難しいボールを一塁線へ。高いバウンドの間に、50メートル5秒9の韋駄天(いだてん)が一塁を駆け抜け、決勝点をアシストした。

 3回までに4点を追う展開だったが、今のチームには勝利の香りがプンプンする。4回に1点を返すと5回には「3番」島内の内野ゴロ、「4番」今江の適時打で1点差に追い上げた。平石監督代行も「打つべき人が打ち、1点が欲しいところで取れた。よく戦ってくれた」とホッとした表情を浮かべた。

 梨田監督が辞任し、17日の阪神戦から監督代行の座に就き、5戦4勝1敗。「固定した打順」で、8割の高い勝率を飾る。1~5番に田中-茂木-島内-今江-銀次を据えた。5人で5試合21打点。一時期は得点力不足とさえ嘆かれた。16日までの5試合は計13得点。1試合平均2・6だったが、今は打つ、勝つ。同代行は「結果が出ても出なくても、打席の中で迷いなく勝負している」と分析する。

 38歳の「松坂世代」。PL学園出身で、98年夏の甲子園で、松坂(中日)擁する横浜と延長17回の死闘を演じた1人。端正な顔立ち、クールさだけが売りではない。決勝点を挙げた田中が「平石さんが感情を前面に出すので、選手も自分の意見を言いやすい」と証言するように、暗かったベンチは明るくなった。

 チームはこのペースだと、最終的に85勝57敗1分けでシーズンを終える。立花球団社長からは、残り80試合の段階で、50勝30敗の数字を求められたが、それもクリアできる。今は最下位でも、CS進出、優勝争いもあり得る。楽天は若き指揮官のもと、夢物語を現実にしようとしている。【栗田尚樹】

 ◆監督交代で好転したチーム 10年ヤクルトは高田監督から小川代行監督に交代し、勝率が2割8分9厘(13勝32敗1分)→6割2分1厘(59勝36敗3分)と躍進。Aクラスは逃すも最下位から巻き返し、貯金4でシーズンを終えた。08年オリックスはコリンズ監督から大石代行監督に交代。4割2分9厘(21勝28敗)→5割7分4厘(54勝40敗1分)と5位から2位に順位を上げ、CS進出を決めた。監督交代で優勝したのは75年広島。ルーツ監督、野崎代行監督の後を継いだ古葉監督が5割(9勝9敗1分)→6割2分4厘(63勝38敗)と4位から躍進し、球団初優勝を果たした。