<谷繁氏の沖縄の車窓から:第3回>
キャンプ評論。評論家と担当記者が車を走らせながら、キャンプ地を転々とする。2人旅のような緩やかな時間に、とりとめのない雑談が展開され、時に掘り出し物に思えるエピソードが出てくる。谷繁元信氏(50=日刊スポーツ評論家)との4泊5日。題して「沖縄の車窓から」。(敬称略)【取材・構成=広重竜太郎】
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楽天に復帰した田中将がブルペン投球で捕手陣に「(ミットの)音は気にしなくていいよ」との担当コラムが掲載された。楽天ではミット音より、メジャーで主流となっている際どい球をミットさばきでストライクにする「フレーミング」を重視している、という内容だ。
谷繁はまず「ミットの芯で捕れることは捕球技術がしっかりしているということ。際どい球をストライクにするのも捕球技術が必要。だから、どちらの技術も比例してうまくなるものだと思う」と持論を説いた。メジャーの捕手陣の練習動画を見たことがあり「ストライクゾーンの外側から内側に入るように捕る意識付けをしている」と感じた。
だがプロのすごみは、ここからだ。「試合ではその逆に捕ることもあった」。ゾーンの内側から外側へ。ボールになるのでは。「ベンチはくさいところ突いていけと指示しても、捕手として歩かせたい時がある。だからわざとボールにするように捕る。球数も減らせる」。良しとされない技術も正しくなる。窓の外に映る青々とした海のように、野球は奥深かった。