キャンプ評論。評論家と担当記者が車を走らせながら、キャンプ地を転々とする。2人旅のような緩やかな時間に、とりとめのない雑談が展開され、時に掘り出し物に思えるエピソードが出てくる。谷繁元信氏(50=日刊スポーツ評論家)との4泊5日。題して「沖縄の車窓から」。(敬称略)【取材・構成=広重竜太郎】

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沖縄自動車道を那覇から北上しながら、朝食を兼ねた昼食の沖縄そばをどこで食べようか思案している時だった。

谷繁 そういえば昔、ボンズと焼き肉を食べに行ったなぁ。

バリー・ボンズ。メジャー歴代1位の通算762本塁打。現役後半の薬物疑惑は隠せないが、なお史上最強打者と看板を立てたくなる。どこで卓を囲んだのか。

02年日米野球の札幌遠征。MLBオールスターの通訳を横浜(現DeNA)時代の同僚が務めていた縁をつたい、思い切って誘った。6歳上、当時38歳のスーパースターは快諾してくれた。トリー・ハンター、ジミー・ロリンズ、A・J・ピアジンスキー。名だたるメンツも同席し、日本人選手1人で着席した。

国を超えても、豪気なばか話に笑い合った。もちろん野球のことも聞いた。「どうやったら長く野球をやれるのか。1シーズンを乗り切れるのか」。「乗り切れるだけのトレーニングをすればいい」。ボンズから王道の答えが返ってきた。

打撃では「左手でボールをつかむように打つ」。右打者の谷繁も同じ感覚で右手でつかむように打とうとしていた。「結局、難しかったんだけどね。でも同じだなと」。いろんなことを再認識した。

会食はほどなく、お開きとなった。ボンズとは日程が合わなかったが、ロリンズとは後日、マーク・バーリーも加わり、再び卓を囲むほど打ち解けた。ところで焼き肉のお代はどうなったのか。

谷繁 みんなメチャクチャ食べるから、やっぱり高かったな。10万円は超えていたか。でも払ったのは年俸15億円のボンズではなく、俺だったんだけどね(笑い)。

ボンズにおごった日本人選手。20年近くたった今、うまみの増す話になった。

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