<プロボクシング:WBA世界バンタム級王座決定12回戦>◇20日◇東京・両国国技館◇観衆7500人
WBA世界バンタム級1位増田陸(28=帝拳)が初挑戦で世界王座獲得に成功した。同級2位比嘉大吾(30=志成)との同級王座決定戦で117-111、117-111、113-115の2-1の判定勝利。26年3月に元5階級制覇王者ノニト・ドネア(フィリピン)を下して、手にした世界挑戦権をつかみ、プロ12戦目でついに世界王座を手中にした。
「目標達成してとても嬉しいんですが、今日の試合で改めてボクシングのあの厳しさを教わりました。またすぐに練習再開して、上を目指して頑張りたいと思います」
比嘉の粘りと執念のボクシングに2-1の判定勝利に持ち込まれただけに、終始謙虚なコメントだった。
同門の大先輩で12度の防衛を誇った元WBC世界同級王者山中慎介と同じ左ストレートを武器とするサウスポー。同じく大和心トレーナー(50)とコンビを組んでいることもあり、山中氏の愛称を受け継ぎ「神の左の継承者」と言われる存在だった。東京6大学ボクシング部最古の1923年(大12)創部の立大出身初の世界王者となった。
やんちゃ少年だった増田は中学2年の時、担任の先生から勧められた百田尚樹著書のボクシング小説「ボックス!」を読み、ボクシングに興味を持った。すぐに地元・広島市のジムに通いはじめ、広陵高に進学。立大に進むと当時早大に在籍していた現同門の岩田翔吉(帝拳)と出会い、岩田と同じ所属ジムを選択した。当初はスーパーフライ級の選手だったが、優勝賞金1000万円の「井上尚弥4団体統一記念杯」バンタム級モンスタートーナメントに出場。準決勝で当時の日本同級王者堤聖也(角海老宝石)に判定負けし、プロ初黒星を喫した。
大和トレーナーは「あの時の陸はまだスーパーフライ級の肉体だった。前日計量後から増えた体重も900グラムのみ。今はバンタム級の体と言える」と太鼓判を押す。元WBA世界スーパーフライ級王者飯田覚士氏のもとでビジョントレーニング(見る力を養い、動体視力や判断力、身体操作を向上)を鍛えた。さらに同門の那須川天心も導入する矢田修氏のBCトレーニング(生体リズムを向上、股関節の柔軟性向上や足腰の強化)も取り組んできた。
堤戦後に日本同級王座を獲得し、世界ランカーを下して世界ランキング入り。今年3月にはドネアにもTKO勝ちし、着実に世界挑戦の階段を駆けあがった。増田は「両国国技館で目の前の(WBA)ベルトを掲げている自分をイメージしている。そのベルトがとても似合っていると思う」とイメージしながら、初めての世界戦に挑んだ。
1926年(大15)、所属ジム前身となる帝国拳闘協会拳道社が東京・新橋に設立。同年7月17日、旗揚げ興行が行われて以来、100年が経過した。プロ12戦目で迎えた世界初挑戦が所属ジムの区切りの年となる巡り合わせだった。増田は「自分の中で大きい。今は亡きマネジャー(長野ハルさん)にベルトをお見せしたいと思っている。勝って天国で見守ってくださるマネジャーに報告したいと思う」と強い決意を持ってリングに立っていた。
◆ラウンドVTR◆
1回 比嘉がいきなり潜り込むような姿勢を見せる立ち上がり。サウスポーの増田もプレッシャーをかけ、ワンツーを繰り出す。比嘉は左ジャブを伸ばし、増田を中心にリングを回る展開。終盤は増田が連打で主導権を握った。日刊採点は増田の10-9
2回 立ち上がりは比嘉が積極的に前へ出るが、増田はうまく間合いを取りながら対応する。増田は変則的な構えも交え、揺さぶりをかける。会場では「大吾コール」が起こる中、比嘉は左アッパーから懐へ入り込む場面も見せた。日刊採点は増田の10-9
3回 比嘉はガードを高く固め、積極的に飛び込んでいく。増田は相手を冷静に見極めながら対応。比嘉はロープを使い、変則的な動きでパンチを狙う。増田は後半にアッパーやストレートを繰り出し、懐へ入ろうとする比嘉へ左ストレートを放った。日刊採点は増田の10-9
4回 増田の左カウンターが比嘉を捉えるが、比嘉はフェイントを交えながら、ためらうことなく前へ出る。踏み込みの速さを生かして距離を詰める比嘉に対し、後半は増田が左ストレートでガードを崩す。残り10秒には比嘉が低い構えから突進し、連打をまとめて見せ場をつくった。日刊採点は増田の10-9
5回 増田がコンパクトな右フックを振り抜き、比嘉の顔面を捉える。それでも比嘉は被弾をものともせず前進。増田は右ジャブからストレートにつなげて主導権を握る。終盤は比嘉が大きく踏み込んでパンチを放ち、増田もジャブからストレートで応戦した。日刊採点は増田の10-9
6回 比嘉が接近戦を仕掛けるが、増田は付き合わず一定の距離を保つ。中盤は増田がプレッシャーを強める展開となるも、比嘉も応戦。増田がバランスを崩した隙を逃さず、比嘉が左フックをヒットさせ、コーナーへ追い込む場面もつくった。終盤は互いにパンチを当て合う場面が増えた。日刊採点は増田の9-10
7回 増田はジャブを効果的に使って試合を組み立てるが、比嘉も力強いパンチで応戦する。前ラウンドの偶然のバッティングで左眉付近をカットした比嘉だったが、積極性は失わない。増田は足を使って態勢を立て直そうとする一方、比嘉が右フックをヒットさせた。日刊採点は増田の9-10
8回 序盤から接近戦となる。比嘉は被弾しながらも前へ出てパンチをヒット。打たれながらも圧力を緩めず、増田をロープ際まで追い込む。増田は右ジャブで距離を取ろうとするが、比嘉はボディーを交えて応戦。左眉付近の出血が激しくなる中でも最後まで足を止めず、増田を追いかけてパンチを放った。日刊採点は増田の9-10
9回 この回は増田が序盤から果敢に前へ出る。比嘉はやや距離を取る展開が続く中、増田はリズム良くパンチをまとめる。比嘉も右ストレートで急襲し存在感を示す。後半は比嘉が攻勢に転じるが、増田は足を使い、クリンチも織り交ぜながら巧みに立ち回った。日刊採点は増田の10-9
10回 増田が打ち下ろしのパンチを見せるが、比嘉も距離を詰めて連打を浴びせる。接近戦を嫌う増田は左、右とアッパーを繰り出すも、比嘉はひるまず突っ込んで応戦。増田の左ストレートが顔面を捉えても、比嘉は意に介さず攻め続ける。終了のゴングまで互いに攻める姿勢を崩さなかった。日刊採点は増田の9-10
11回 増田が序盤から手数を出して攻める。比嘉はガードを固め、打ち終わりを狙う。互いにアッパーを繰り出し、増田は右ジャブで距離をつくる。踏み込んでくる比嘉には左ボディーを合わせる。残り20秒からは増田がクリーンヒットを重ね、ワンツーも決めて印象を残した。日刊採点は増田の10-9
12回 序盤から激しい打ち合いとなる。互いにゼロ距離でパンチを浴びせ合い、勝負を決めにいくような展開。増田がワンツーを繰り出すが、比嘉も堅いガードで耐える。両者とも息を荒らげながら連打を応酬し、終盤には比嘉も連打で応戦。最後はノーガードで打ち合い、この一戦を象徴するような壮絶な攻防の末、試合終了のゴングを聞いた。日刊採点は増田の10-9