<プロボクシング:IBFライトフライ級タイトルマッチ12回戦>◇8日◇東京・有明コロシアム
IBF世界ライトフライ級王者八重樫東(33=大橋)が、左肩故障を乗り越えて王座を守った。
同級11位マルティン・テクアペトラ(メキシコ)に序盤苦戦も、中盤からリードして2-1で判定勝ちした。3週間前に「左肩甲下筋損傷で全治2~3カ月」と診断され、スパーリングどころかジャブしか打てなかった。そんな逆境にもめげず、終盤には激闘に持ち込み、3階級制覇王者として初防衛を果たした。
八重樫は終盤2回は頭もつけて、激しく打ち合った。「つぶしてやろうと思った」。またも激闘になったがベルトを守り抜いた。序盤は好戦的挑戦者の伸びるパンチを再三もらった。「リズムがつかみづらかった。2回で計算が狂った」。判定も「分からなかった」と苦しんだ理由があった。
4月中旬。左肩の背中側の筋肉に「ビキッ」と痛みが走った。川崎市内の病院で「痛みを取るには2~3カ月の安静が必要」と診断された。スパーの追い込みどころか、フックやアッパーを打つと痛みが走った。可動域が狭まり、軽いジャブしか打てなくなった。
前回から始めたフィジカルトレは負荷を増した。手応えを得ていた調整が大きく狂った。11年に2度目の挑戦で世界王者奪取の時もスパーで右肩を痛めた。今度は「生命線」という左。松本トレーナーからは「いろいろ経験してきたし、打ち合える根性はある。少しでもいい状態で臨むことだけ考えよう」と諭された。
治療を受けながらの練習で踏ん切った。そこへまたショックが襲った。拓大の先輩内山が2回KO負けで王座から陥落。その直後だけに、格下相手にも重圧がかかった。30日の公開練習では「頑張る姿を見せたい」としんみりと話した。
翌日に内山からメールが届いた。「俺は大丈夫だから。試合頑張れよ!」。八重樫は「気にかけてくれた。どれほど大きな人なのか。今あるのは先輩のおかげ。スイッチが入った」と奮起。奈落の底の先輩から逆に励まされ、何よりの起爆剤になった。
世界戦7勝目で、2-1の判定は初めてとなる。「誇れる試合でなく、先輩に申し訳ない」とわびた。ケガにも「それは言い訳。それを含めてが調整で力不足。収穫は生き残ったこと」と話した。
2カ月前からマンションで単身生活を送るが、3週間前からは週末の帰宅、前日計量後の家族との対面もやめた。試合に集中と休養を優先した。ゴールデンウイークを寂しくすごした長男圭太郎くん(10)。リング上で「一緒に遊びたい」とせがむと「顔の腫れが引いたらね」。強くて優しいパパは笑って答えた。【河合香】