かつて“辰吉2世”京口紘人の兄竜人、不祥事で引退

京口竜人(2011年12月18日撮影)

 かつて“辰吉2世”と期待された男が、不祥事でリングを去る。

 ボクシングフェザー級の元日本ランカーで、IBF世界ミニマム級王者京口紘人(23=ワタナベ)の兄・竜人(26=グリーンツダ)の引退と所属ジムとの契約解除が4日、大阪市内の日本ボクシングコミッション(JBC)関西事務局で発表された。

 京口竜は7月12日に酒気を帯びた状態で車を運転し、ぶつかったタクシー運転手や歩行者の計2人に軽傷を負わせる飲酒事故を起こし、1日に大阪区検から道交法違反(酒気帯び運転)と自動車運転処罰法違反(過失傷害)の罪で略式起訴。大阪簡裁は同日、罰金70万円の略式命令を出し、すでに従っている。

 京口竜は2年前にも傷害事件で起訴されており、事態を重く見たグリーンツダの本石昌也会長(41)が引退を勧告、本人も受け入れた。この日午後5時に設定された同事務局での会見に出席予定も、同日午後2時に本石会長に「欠席したい」旨の連絡があったという。同会長は「裏切られた。本当に悲しいです」と本人に代わって頭を下げた。

 戦績15勝(11KO)2敗1分け。11年にフェザー級の新人王を獲得し、最高で日本同級9位にランクされ、当時所属したのが大阪帝拳でもあり“辰吉2世”と将来を嘱望された。しかし、15年10月に傷害事件を起こし、1年間のライセンス停止処分を受けた。その京口竜にチャンスを与えたのが本石会長。昨年、ジムを移籍して心機一転やり直すはずだった。今月11日の興行でも試合が組まれていた。さらに会長は「12月にも日本ランカーとの試合を組む予定だった」と明かす。

 そんな矢先の不祥事。事件の直後、7月23日に弟が世界のベルトをつかんだ。会長は「本当に期待していました。預かっている以上、弟と同じステージにあげたい。ジムのトップ選手に育てたいと思っていました」。それだけに「今回の件はびっくりと悔しい思い。信じていたのに…」と言葉を失った。

 この日の会見も、第2の人生へ歩むけじめにと設定したものだった。ドタキャンに「これでもう俺との縁はないと告げました」。ライセンス停止期間の処分はJBCの倫理委員会で決まるため、復帰の可能性は完全には消えていない。本人も当初は、引退勧告にも現役続行を強く望んだという。しかし、多くの期待と信頼を裏切ったボクサーに未来は見えない。京口竜は会長を通じ「申し訳ありません。責任をもって引退します。(今後は)陰ながら弟を応援します」とコメントした。【実藤健一】