<新日本:東京ドーム大会>◇5日◇東京ドーム
約5メートルのダイビング・ハイフライ弾!! エース棚橋弘至(45)が22分40秒、滞空時間の長いラダー(はしご)からのハイフライフローでIWGP・USヘビー級王者KENTA(40)を撃破し、約2カ月ぶりの同王座返り咲きを果たした。
昨年11月の2度目の防衛戦で敗れ、王座陥落に追い込まれたKENTAへのリベンジも成功。相手の要求をすべて飲んだ「何でもあり」のノーDQ(反則裁定なし)形式の激戦を、衝撃的なダイブ必殺技で制した。
王者の要求に応え、ノーDQ形式を受けた棚橋は非情に徹した。5メートル近いラダーを設置してよじ登ったKENTAに対し、何とかラダーを揺らして落とした。巨大なスチール製ごみ箱に顔面から落下し、流血した王者をテーブル上に寝かせると、鬼の形相で自らがラダー頂上へ。テーブルが真っ二つになる衝撃のハイフライフローでKENTAを押しつぶし、片エビ固めでフォール勝ちした。
試合開始と同時にKENTAとの竹刀勝負でめった打ちにすると、ベルトで殴打された。次々とリングに持ち込まれたテーブル、パイプいす、スチール製ごみ箱、ラダー、アタッシェケースの凶器アイテム。テーブルにたたきつけられると、ギター攻撃で応戦し、KENTAをパイプいす上にスリングブレイドで投げ捨てた。強い「痛み」を感じる激戦だった。
「うれしいとか、悲しいとか、悔しいとか、何の感情を残ってないです。ただあるのは虚無感…。むなしいだけ…」。しばらく頭を抱えた棚橋の口から出た最初に出た言葉だった。メキシコなど海外遠征のみでヒール転身はあったものの、国内ではベビーフェイスを貫いてきた新日本のエース。藤波辰爾、武藤敬司ら正統派プロレスを継承してきただけに「ああ、藤波さんが好きだったな。ああ、武藤さんにあこがれたな。で、今、これか」と複雑な心境を吐露した。
さらに「こってこての60分フルタイムドローのレスリングをやりたいよ」と涙声になったものの、昨年11月の大阪大会で敗れていたKENTAへのリベンジには成功した。同8月の米国大会でランス・アーチャーを下して日本人初の同級王者となった際、米ファンから大きな拍手と歓声を浴びた。IWGP・USヘビー級王者として再び米国に登場することを約束していたこともあり、念願のベルト再奪取でもある。
「ベルトは返ってきたけど、どこからスタートすればいいのか分からない」とも口にした棚橋だが、新日本の創立50周年を飾るためにもベルトを保持しているエースの輝きが必要。コロナ禍で苦しむ世の中を明るく、元気にするエースの役目が22年も待っている。【藤中栄二】