<武尊、完全燃焼へ 4・29有明で引退試合>(4)
「ONE SAMURAI 1」(4月29日、東京・有明アリーナ)でロッタン・ジットムアンノン(28=タイ)との引退試合を迎えるキックボクサー武尊(34=team VASILEUS)にとって、今でも印象に残っているのはどの試合だろうか。
「ONEデビュー戦のスーパーレック(タイ)との試合はちょっと特別かもしれないですね。こんな強いヤツいるんだなっていうのはありました」
武尊は24年1月の「ONE165」(有明アリーナ)でONEデビュー。フライ級キックボクシング世界王者のスーパーレックに挑戦した。3回にボディと顔面へのパンチ連打であわやKOというところまで追い込んだが、王者の執念が勝り、武尊は判定0-3で惜敗した。
文字通りの死闘で、これまで経験のないようなダメージを負った。「1ラウンドに足の骨が折れちゃって。ローキックをカットした時に膝の一番骨が出て柔らかいところに当たって。そこからカットして(患部に)当たったら立っていられないと思って、太ももで全部受けちゃったっていうのはあります」。試合後には膝の2カ所の骨折および太ももの筋断裂で車いすや松葉づえでの生活を余儀なくされた。「試合でローキックを効かされたことがなかったんで。初めての経験でした」と振り返る。
それでも闘志は衰えなかった。「まず(膝が)曲がるまでに2、3カ月かかって。その時はもう1回、戦えるのかって不安はありました。筋力も落ちてるし。でも痛みとか、治らない感じとかが余計に悔しさを湧き上がらせてくれたので。デビュー戦で壊されて引退は格好悪すぎるなって。だから『やめる』っていうのはなかったですね」という。
そして「本当にロッタンとやりたくて。ロッタンとやる前に壊されて終わったんだったら燃え尽きれない。そこは一番でかかったですね」と、あらためてロッタンへ照準を合わせて立ち上がった。
武尊は過去に戦った選手の中でも「スーパーレックとかロッタンは本当に強いなと思います。バチバチに殴り合う強さだけじゃなくて、間合いだったり、殺気だったり、そういう本能的なところの強さっていうか。人間としての強さ、生物としての強さみたいなのはONEに行って、あの2人からすごく感じます」という。
その上で「THE MATCH 2022」で戦った那須川天心については「悪い意味ではないですけど、天心選手とやった時は“強さ”っていうのはあんまり感じなくて。“うまいな”っていう感じでしたね。試合に勝つのがうまい選手と、戦いが強い選手ってまた違うかなって思います」と説明した。【千葉修宏】(つづく)