琴奨菊が綱獲りへ好発進 ハード日程でもハードトレ

高安に快勝し、白星スタートを飾った琴奨菊(撮影・岡本肇)

<大相撲春場所>◇初日◇13日◇エディオンアリーナ大阪

 綱とりに挑む大関琴奨菊(32=佐渡ケ嶽)が、盤石の相撲で白星発進した。西前頭筆頭の高安に何もさせずに寄り切った。初優勝の初場所後から多忙な毎日を過ごしたが、その合間を縫って鍛え、パワーアップした「体」の成果を見せた。ほかの3大関と横綱日馬富士は安泰だったが、横綱白鵬が小結宝富士に、横綱鶴竜も関脇豊ノ島に敗れる波乱の幕開けとなった。

 土俵入りでの人一倍大きな拍手や賜杯返還の儀式。そして、最後の仕切り前の「琴バウアー」にも大歓声が起こった。今までと流れは違い、独特の緊張感が漂った。だが、琴奨菊には「先場所の方が緊張した」と笑い飛ばす余裕があった。

 左頬を張られても揺るがず粘られても休まず攻めた。盤石の寄りは力強かった。「満足してます。場所前(高安の)体が大きく見えたから、しっかり踏み込んでと思っていた。体も気持ちも充実して終われた」。最高の幕開けだった。

 優勝した初場所後、一気に世界が変わった。取材やイベント出演の依頼が、ファクスで1日200枚届いた日もあった。用紙を補充しても間に合わなかった。部屋関係者は「かなり選別した」というも、丸々休んだ日は1日しかなかった。

 だが、どれほど多忙でも欠かさなかったトレーニングでは、むしろ限界を極めていた。夜9時から「死んでもらうトレーニング」を開始した今月1日。何度もぶっ倒れた。同11時半、気温3度を切る寒さの中、はだしで50キロ超のタイヤを85メートルも押した。終わると、トイレで吐いた。「10年ぶりだった。でも、死ななかった。オレ、つよなったよ」。

 初優勝につながった体幹を鍛えるヤカン形の「ケトルベル」は初場所前まで24キロが最高だった。だが、今場所前には50キロを持ち上げることができた。稽古不足を心配する声は多かったが、師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)は「肩周りが大きく、胸板も厚くなった。おしりも大きくなった」。パワーアップの実感は、初日の土俵で確信できた。

 もう1つ、確信を得ていた。「歓声を多くいただいた。いろんなところに出させてもらったのは、1人でも多くの人に相撲に関心を持ってもらいたくて。それで興味を持った人も今日、応援してくれたと思う。やってきた方向性は間違っていない」。綱とりにつながると信じた道へ、琴奨菊が歩み出した。【今村健人】