重大な疑義vs公明正大 春場所場外戦行司は内閣府

記者の質問に答える八角理事長(撮影・岡本肇)

 大相撲の貴乃花親方(45=元横綱)が、内閣府に告発状を提出したことを受けて、日本相撲協会トップの八角理事長(54=元横綱北勝海)が10日、受けて立つ姿勢を示した。今日11日の春場所初日を前に、会場のエディオンアリーナ大阪で行われた土俵祭り後、報道陣に対応した。告発は元横綱日馬富士関による暴行事件の調査や理事解任について、内閣府の公益認定等委員会に、協会への立ち入り検査や適切な是正措置を求める内容。これに対し「公明正大にやってます」と正当性を主張して反論した。

 両者の対立が、いよいよ色濃くなってきた。貴乃花親方が前日9日夜に、部屋のホームページを更新、報道各社にファクスを送り、内閣府に告発状を提出したと発表。弟子の貴ノ岩が被害に遭った暴行事件を巡る相撲協会の調査、1月4日に理事を解任されたことへの不透明さを指摘した。さらに「重大な疑義が生じています」と記し、相撲協会の対応を非難した。これに八角理事長は「協会としてはいつ(内閣府が)話を聞きに来ようが、しっかりとやっている。問題ない。公明正大にやっています」と反論。協会の正当性を主張した。

 告発状を提出した代理人弁護士によると「協会の公益認定の取り消しを求めているものではない」とし、2月の役員候補選挙で落選した貴乃花親方の理事復帰も求めていないという。春場所目前でもあり、八角理事長は「まだ何も聞いていないので、何とも言えない」と慎重に話した。それでも協会としては貴乃花親方、貴ノ岩を含め、危機管理委主導で全関係者から事情聴取し、事件を正確に把握した自負もある。関係者への処分や経緯に問題がなかったか問われると「もちろん」と語気を強めた。

 一方の貴乃花親方もこの日、京都・宇治市の部屋で報道陣に対応した。告発状提出の目的について「現在進行形ですから。進行中のことが表に出たかなということで、ご理解いただければ。特段変わったことをやっているわけではないので」と、具体的なことは語らなかった。春場所目前だけに「なぜこの時期に」という質問には「この時期に来たかなぁと」と、答えになっていない答えで、けむに巻いた。今後についても「粛々と淡々と行っていくということです」と、最後まで核心には触れなかった。

 代理人弁護士によれば、貴乃花親方は暴行事件を巡る議事録を開示し、全てを明らかにするのが狙いだという。一方の協会は、各種資料を隠すつもりもない姿勢。対立しながらも、内閣府に判断を委ねることに変わりはない。今後、内閣府の判断次第で、事態が一気に進展する可能性もある。【高田文太】

 ▼スポーツ団体と内閣府 08年の公益法人制度改革に合わせ、移行期間の5年間で多くのスポーツ団体が公益法人化。これに合わせ、内閣府に法人の公益性を審議する公益認定等委員会が設置された。必要に応じて立ち入り検査、報告徴収などを行い、問題のある法人へは総理大臣名での勧告、命令、認定取り消しが行われる。スポーツでは選手へのパワハラ問題などで全日本柔道連盟が13年に初の勧告を受け、同年には日本アイスホッケー連盟も執行部の分裂騒ぎで勧告が出された。14年には全日本テコンドー協会が度重なる勧告を受けたが改善を断念。公益認定の取り消しを申請して認められた。