鶴竜、綱の技で怪力栃ノ心制す 初連覇で完全復活だ

栃ノ心をすくい投げで下す鶴竜(撮影・野上伸悟)

<大相撲夏場所>◇14日目◇26日◇東京・両国国技館

 横綱鶴竜(32=井筒)が今場所初めて単独トップに立ち、優勝に王手をかけた。1敗で並んでいた怪力の関脇栃ノ心に技術で対抗して力を発揮させず、最後はすくい投げで仕留めた。5日目から10連勝で13勝1敗。今日27日の千秋楽で白鵬との横綱対決を制し、4度目の優勝を果たした3月の春場所に続く、初の2場所連続優勝をつかみ取る。

 力でねじ伏せに来た相手を、鶴竜が技で制した。低く鋭く頭からぶつかると、すぐに間合いを詰めた。差し手争いに苦戦すると見るや、右で張って栃ノ心の上体をのけぞらせて右を差した。立て続けに右から下手投げを打つと、今度は相手を左右に動かし、左もねじ込みもろ差し。頭をつけると1度はつられそうになったが、腰を落として踏ん張った。上手は許したが、ひじを張って力を発揮させなかった。投げの打ち合いになったが、体勢は盤石。栃ノ心の上手を振りほどく格好で、鶴竜がすくい投げを決めて大一番を制した。

 12日目に白鵬を力勝負で破った力自慢の相手と、あえてまわしに手が届く距離で勝負を挑んだ。1歩間違えば相手の思うつぼ。それでも取組後は「がっぷりよりは、中に入った方が勝機があると思っていた」と明かした。相手得意の右四つの間合いを1度は乗り越えるかけに出て、懐に潜り込んで白星をつかんだ。

 栃ノ心との優勝争いは、1月の初場所に続いて2度目。「力は前から強かったけど、以前と違うのは上下のバランスが良くなったこと。強い下半身に、冬巡業のころから上半身もついてきた」。優勝を争う相手になることは、平幕だった昨年末から予感していた。

 さらに相手は正代に敗れて気迫十分のため「いつもよりも気合を入れた」と明かした。「顔に出ないから」と、気合が伝わりにくいことは自覚。今年になって精神的にオンとオフの切り替えを「(取組直前の)時間いっぱいのあの一瞬で最高に気合が入れられるようになった」と、ピンポイントでできるようになったという。この日も白鵬が敗れた取組を土俵下で見たが「誰が負けたとかは気にしない。今まで何度も何度もそれで失敗したから」と冷静だ。優勝した次の場所は過去3度、すべて2ケタ勝てないのも心の乱れと理解する。初場所まで進退もささやかれた崖っぷちから、初の連覇で完全復活を果たすつもりだ。【高田文太】