【インタビュー2】逸ノ城、現在は首都圏マンションで独り暮らし、食事も自炊 角界には未練なし

元逸ノ城の三浦駿さんは色紙に「今までありがとうございました。」としたためた(撮影・小沢裕)

電撃引退した大相撲でモンゴル出身、元関脇逸ノ城の三浦駿さん(30)が7日までに、都内で日刊スポーツのインタビューに応じた。

3月の春場所の十両優勝後の5月4日に突如引退。その後、相撲界と距離を置いてきたが、半年ぶりに沈黙を破り、来年2月11日に都内のホテルで行う断髪式への思い、現在の暮らしぶりなどを告白。現役時代は初土俵から5場所目で、新入幕優勝に迫った「怪物」の“今”に迫った。【取材・構成=高田文太、平山連】

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★モンゴル凱旋(がいせん)

引退会見後、元逸ノ城は7月から約2カ月間、故郷のモンゴル・アルハンガイ県に帰省していた。首都ウランバートルから約400キロ離れた大草原。遊牧民の移動式住居ゲルで寝泊まりし、パワースポットとして知られる山に父アルタンホヤグさんと一緒に登った。夜は満天の星を眺めた。

「ウランバートル市内にもいて(モンゴル相撲などが行われる夏の祭典)ナーダムも、参加はしていませんが見てきました。遊牧の生活は久しぶりで楽しかったです。あと、応援してくださった村の皆さんに『ありがとう』という思いで、ウランバートルから歌手を呼んで、料理を用意したら、体育館みたいな場所に入りきれないほどの人が集まってくれました。10年ぶりに会う人がほとんどでしたが、すごかった。うれしかったですね。リフレッシュできました。故郷でゆっくり楽しんで、また日本に戻ってきました」

冬はマイナス30度にも達するという村の英雄は、1000人にも達しそうな地元住民からのねぎらいに、心が洗われたという。

★現在の生活

21年9月に日本国籍を取得している。現在は首都圏の賃貸マンションで独り暮らしをしている。“付け人”はもういない。運転免許を保持してないため、関係者に車で後援者らへのあいさつの送迎をしてもらっている。基本的に身の回りのことは自分でやるという。

「住まいは3LDKのマンションです。ただ、やっぱり荷物が多いんです。明け荷、化粧まわし…。1部屋は荷物だけでいっぱい。あとトイレが狭い(笑い)。でも楽しいですよ。掃除や洗濯は(湊)部屋でもやっていたので、困ることはないです。気持ちのスイッチが入ると一気にやります。スイッチが入るまでに時間がかかりますけど(笑い)。そのうち運転免許も取りたいです」

気になる体重は「変わっていないと思います」と話した。というのも、200キロ超まで計測可能な体重計が身近にないため、正確には分からないのだという。

「ダイエットは全然していないです。食欲は現役の時と変わらないです。でも現役の時のように稽古をしていないから、体の張りがなくなって小さく見えるかもしれない」

鳥取城北高への留学で日本に来る前は、妹や弟のために料理を作っていた。大相撲では幕下15枚目格付け出しでデビュー後、3場所目で新十両に昇進。下積みのちゃんこ番経験がないため「ちゃんこを作ることはできない」という。ただ現在は“ちゃんこ風”の鍋料理を好んで作っている。

「作るのはモンゴル料理が多いけど、鍋にかつお節といろんな野菜を入れて、肉をしゃぶしゃぶみたいにして食べます。野菜は自分でカットして。近所にスーパーがあるので自分で買いに行きます。あいさつ回りで外食もありますが、家では自分で作ります。料理は好きですね」

現役時代と変わらず、食事は昼と夜の1日2食だ。引退の理由として挙げた腰痛は「今はいい感じです。体調はいいですね」と、快方に向かっているという。

★第2の人生

今後については現状、全くの白紙を強調した。

「いろいろ考えてはいますけど決まってはいないです。まずは断髪式に集中して、それからという感じです。俳優? ないですね。日本とモンゴルを行ったり来たりになるけど、日本にいる方が多いと思います。日本に住むので日本国籍でいた方が、いろいろとやりやすくなる。今のところ、モンゴル国籍に戻すことは考えていないです。何もしないで生きていくことは絶対にできない。(光熱費など)いろいろなお金もかかる。断髪式が終わったら、次のことに集中したいです。日本を軸足にして仕事をしたいです」

今後、結婚の予定があるのか、ないのかも聞いた。

「いやいや、ないですよ(笑い)。奥さんがいてくれたら、断髪式の準備も手伝ってくれて最高ですけど。だから準備も自分1人ですし。フィアンセ? いないですね…」

苦笑いを見せる場面もあったが、第2の人生を楽しみにしている様子だった。引退後、大相撲のテレビ中継をほとんど見ず「結果を確認するぐらい」というのも、未練のなさを物語っている。インタビューの最後に「今、伝えたいこと、現在の心境などを色紙に書いて」とお願いした。すると少し考えて「今までありがとうございました」と記した。電撃引退から半年が経過。現役生活を振り返り、最も強く残った思いはファンへの感謝だったようだ。

◆三浦駿(みうら・たかし) 元逸ノ城。1993年4月7日、モンゴル・アルハンガイ県生まれ。10年に鳥取城北高へ相撲留学。13年に全日本実業団選手権を制覇し、幕下15枚目格付け出し資格を得て湊部屋に入門。14年初場所で初土俵、同年秋場所で新入幕。同年九州場所で新関脇。21年9月に日本国籍を取得。今年5月の夏場所前に腰痛の悪化で現役引退。最高位は関脇。優勝1回。殊勲賞3回、敢闘賞1回。金星9個。

<逸ノ城の引退までの経過>

★初優勝 昨年7月の名古屋場所で幕内初優勝。新入幕から所要47場所は史上9位のスロー記録だった。

★親方夫人への暴行疑惑 昨年九州場所前、師匠の湊親方(元前頭湊富士)との確執、おかみへの暴力、自身のアルコール依存の疑いが週刊誌などで取りざたされた。

★1場所出場停止 コロナ禍で外出禁止だった20年11月、21年8月に無断で2度外出したとして日本協会から今年初場所の出場停止処分を受けた。暴力についても「一部、事実関係を確認した」と発表された。

★十両優勝 出場停止明けの春場所は十両で栃ノ心、朝乃山、落合(現・伯桜鵬)らを抑えて14勝1敗で自身2度目の十両優勝。

★電撃引退 夏場所で2場所ぶり再入幕を決めた直後の5月4日に電撃引退を発表し、10年間の力士人生に別れを告げた。

 

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