世界的指揮者の小澤征爾氏(80)が15日(日本時間16日)、ロサンゼルスで行われた世界最高峰の音楽の祭典「第58回グラミー賞」で、最優秀オペラ録音部門で受賞した。8度目のグラミー賞ノミネートで、初の快挙。「世界のオザワ」にまたひとつ名誉が加わった。受賞作はすでに注文が殺到する小澤フィーバーとなっている。
小澤氏はこの日、喜歌劇「こうもり」(18日初日)のリハーサルのために訪れた京都市のロームシアター京都で、「すばらしいです」と受賞を喜んだ。報道陣に声を掛けられると感謝するように両手を合わせ、笑みを浮かべた。リハーサルに招待された学生たちに大きな拍手で迎えられ、立ったり座ったりしながら指揮、元気そうな様子を見せた。終了後、楽屋口から出てきた小澤氏はファンにサイン。リハーサルに出演した俳優笹野高史(67)は「本人に直接『おめでとう』を言えて幸せでした」と話した。
授賞式には約30年にわたり音楽監督を務めていたボストン交響楽団の関係者が代理出席。小澤氏はセイジ・オザワ松本フェスティバル実行委員会を通じ「たいへんうれしく、みんなとこの作品をつくれたことを誇りに思います。仲間たちとこの喜びを分かち合いたいです」とコメントした。
受賞作品は13年8月に長野県松本市で開かれた音楽祭「サイトウ・キネン・フェスティバル松本(現セイジ・オザワ松本フェスティバル)」で指揮したラヴェル作曲の歌劇「こどもと魔法」を収めたアルバム。10年に食道がん手術を受け12年3月から1年間休養した後の復帰公演だった。サイトウ・キネン・オーケストラが演奏し、地元の子供たちも合唱で参加した。
サイトウ・キネン・フェスティバルは、小澤氏の恩師、斎藤秀雄さんをしのんで門下生らが結成したサイトウ・キネン・オーケストラを母体に、92年に始まった。オーケストラ公演とオペラ公演を2本柱に小澤氏が、音楽祭のために集う国内外の奏者によるオーケストラを率いて聴衆を魅了してきた。「自分で始めて、責任もあって、同級生や仲間が世界中から集まっているから下手なことはできない」と話したこともあった。今年のフェスティバルでも「こどもと魔法」の上演が予定されており、祝福ムードにつつまれそうだ。
若手育成にも心血を注いできた。00年に「小澤征爾音楽塾」を設立するなど、積極的に若者たちと関わっている。受賞作「こどもと魔法」は、母親に叱られた子供が成長するさまをファンタジーとユーモアを交え描かれた作品。若者たちを見る小澤氏の優しい視線を感じることができる。
◆小澤征爾(おざわ・せいじ) 1935年(昭10)9月1日、旧満州奉天市(現中国瀋陽市)生まれ。小学生時代に豊増昇氏にピアノを習い、桐朋学園短大音楽科で斎藤秀雄氏に指揮を学ぶ。58年フランスへ渡り、同年9月ブザンソン国際指揮者コンクールで日本人初の1位に輝く。73年からボストン交響楽団の音楽監督を務める。02年にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートを日本人として初めて指揮した。同年、ウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任する。08年には文化勲章受章。長女はエッセイスト小沢征良氏、長男は俳優小沢征悦、おいはミュージシャン小沢健二。
◆グラミー賞 59年に始まり、非営利団体の全米レコード芸術科学アカデミーが主催。アーティスト、作曲家、プロデューサーら同アカデミー会員の投票で決まる。売り上げより、作品の質や芸術性が評価される傾向。ロック、クラシックなど全ジャンルが対象で83部門ある。最優秀アルバム、同レコード、同楽曲、同新人の賞が主要4部門と呼ばれる。日本人では83年に坂本龍一氏が映画「ラストエンペラー」のテーマ音楽で最優秀オリジナル映画音楽賞、01年にシンセサイザー奏者喜多郎が最優秀ニューエージアルバム賞受賞。11年にはB’zのギタリスト松本孝弘が最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバム賞を獲得した。