29歳の奈里子「胸が大きく開いたドレスで」頑張る

WOWOWの連続ドラマに出演する奈里子(撮影・滝沢徹郎)

 女優奈里子(なりこ=29)が、21日スタートのWOWOWの連続ドラマW「片想い」(土曜午後10時)にレギュラー出演する。

 中谷美紀演じる性同一障害者の主人公が、バーテンダーとして務めるクラブのホステス役だ。「秋吉久美子さんがママで、中村アンさんが売れっ子ホステス。私も胸が大きく開いたドレスで頑張ってます」と笑う。

 原作は作家・東野圭吾氏の100万部を超えるミステリー小説。CM出演などを続けながら女優を目指してきた奈里子にとって、昨年のNHK大河「真田丸」出演に次ぐ大きなチャンスだ。「一流の人と共演することで得るものがたくさんありますね」と言う。

 「真田丸」では堺雅人演じる真田信繁(幸村)、その姉で木村佳乃演じる松らのそばに控える次女役。「木村さんには、すごくよくしていただきました。誰よりも大きな声であいさつしてくれて、話し掛けてくれた。女優としてはもちろん、お人柄に憧れています。木村さんのようなすてきな女性になれたらと思います」と言う。

 女優に憧れたのは3歳のころから。「沖縄出身で、周りの子は安室奈美恵さんやSPEEDに憧れて、歌手志望が圧倒的でした。みんな踊っていたけど、私はずっと女優志望。ドラムをたたいてバンドやってたんですが、音楽の道よりもお芝居に引かれました」。

 高校1年の時から、地元・沖縄でタレント活動。CM出演や情報番組のリポーターを務め、女子高生バンドの一員として土日はライブ出演。10年にはミス・デューティーフリー(免税店)の準ミスに選ばれた。それなりに充実したタレント活動だった。

 「女優をやるなら沖縄から出なくてはと思っていました。映画にしても、ドラマにしても、撮影は東京や大阪が多いですからね。高校時代からアルバイトでお金をためて、東京へオーディションを受けに通っていました。最高にアルバイトを掛け持ちしたのは7つ。朝6時からカフェ、イタ飯、ステーキハウス、3時間休んでステーキハウス、ティッシュ配り、コンビニ、おみやげ屋さんと、こなしていました。那覇の繁華街の国際通りは端から端まで制覇しましたね」と笑う。

 10年に大阪へ出て、翌11年3月10日には上京。翌日に東京・渋谷で東日本大震災にあった。「三軒茶屋のホテルに泊まっていたんですが、電車が止まって、戻り方が分からなくて、来た早々に大変なことになったと途方に暮れました。今思えば、歩けるくらいの距離なんですが、当時は東京に知っている人がいなかったので、すごく心細かったです」と振り返る。

 沖縄で、それなりにタレント活動をこなしていたので自信はあった。「バイトを掛け持ちしながら、所属させてくれる事務所を探したんですが、大きな壁にぶつかりました。沖縄でやって来たことが、何も通用しない。自分はゼロなんだと、無力さを感じました。でも、3歳から夢見てきた女優を諦める事なんてできませんでした」と踏ん張った。

 お金のない時は、もらった食パンの耳をかじって頑張った。「バイトの面接に行くのに、目の前の交番に飛び込んで電車賃を借りたこともあります。一緒に女優を目指していた子の中には、バイトばかりの生活に見切りをつけて故郷に帰っちゃう子もいました。私は、心配する親には平気なふりをしていました。何か形に残さなきゃ、沖縄には帰れないと思っていました」と言う。

 大河ドラマ、ドラマW…小さな形ができ始めた。「父方の祖母の妹がアメリカに住んでいるんです。私が小さな頃はすごくかわいがってくれた。もう80代で、なかなか日本に帰って来られないんです。でも、NHK大河はアメリカでも見られて、すごく喜んでくれた。夢みたいな話ですけど、いつかは大河ドラマのヒロインを目指せるような女優になりたい。きれいな役を演じるより、人間の欲や悪を表に出せる女優になりたい」と夢を膨らませている。

 小さな一滴が、大河へ向けて流れ始めた。