デル・トロ監督、日本で食べ過ぎ「前が締まらない」

「シェイプ・オブ・ウォーター」来日会見を開いたギレルモ・デル・トロ監督と菊地凛子(撮影・村上幸将)

 第90回米アカデミー賞で最多13部門にノミネートされた米映画「シェイプ・オブ・ウォーター」(3月1日公開)を手がけた、メキシコのギレルモ・デル・トロ監督(53)が来日し30日、都内で会見を開いた。

 「シェイプ・オブ・ウォーター」は、清掃員として政府の極秘研究所に勤める、しゃべることが出来ない女性イライザ(サリー・ホーキンス)が、研究所に持ち込まれた人間ではない不思議な生き物への極秘の実験を目撃。興味を持った生き物と手話で意思疎通し、言葉を超えた愛を育む物語。デル・トロ監督は「今は、我々と違う異種のものを恐れ『他の者を信頼するな、恐れろ』と言う時代。そういう時代に、このストーリーは必要」と、現代社会へ込めたメッセージを熱く語った。

 一方で、舞台を米ソの冷戦時代だった1962年に置いた意図について「現代に設定を置くと(そうした思いを)聞いてもらえない。おとぎ話として語れば…1962年に声のない女性と獣がいますという話なら聞いてくれると思った」と説明した。

 また、主人公のイライザが住むアパートの壁紙を、魚のうろこ模様にした理由について「北斎が描いた大きなコイから取っていますね」と葛飾北斎の浮世絵から着想を得たと明かした。

 この日は、デル・トロ監督の「パシフィック・リム」(13年)に出演した菊地凛子(37)がゲストで登壇し、花束を贈呈した。菊地は「シェイプ・オブ・ウォーター」について「本当に美しかった。昨日、見て感動がさめやらない。究極のラブストーリー…本当の深い愛が何かを見せてもらった。すごく力強く美しい。何度も見たい。監督の愛情を細部まで見せてくれる作品」と絶賛した。

 それを聞いたデル・トロ監督は「ドウモ」と日本語で感謝し、また菊地とのフォトセッション時には、カメラマンに「チョットマッテ」、「アリガトウ」などと日本語で声をかける一幕も。親日家として知られ、多忙な時期を縫って自ら熱望しての来日となったが「ジャケットの前が締まらなくなった。日本で、おせんべいやおもち、しゃぶしゃぶとか、いろいろ食べたから……日本に着いた時は、締まったんだよ。ドウモアリガトウ」と笑った。

 「シェイプ・オブ・ウォーター」は、17年に世界3大映画祭の1つ、ベネチア映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞。アカデミー賞では作品賞、デル・トロ監督が監督賞と脚本賞、サリー・ホーキンスが主演女優賞、リチャード・ジェンキンスが助演男優賞、オクタビア・スペンサーが助演女優賞、さらに作曲賞、編集賞、衣装デザイン賞、美術賞、撮影賞、音響編集賞、録音賞にノミネートされた。

 デル・トロ監督は、06年に「パンズ・ラビリンス」が脚本賞にノミネートされて以来、11年ぶり2度目のアカデミー賞へのノミネートについて「これで2回目のノミネーション。2回とも、自分らしさを表現した作品でノミネートされたのがうれしい」と笑みを浮かべた。授賞式は3月4日(日本時間同5日)に米ロサンゼルスのドルビー・シアターで行われる。【村上幸将】