女優吉行和子さんが2日午前0時19分、肺炎のため都内の病院で亡くなったことが9日、分かった。所属事務所が発表した。90歳だった。
吉行さんは1935年(昭10)8月9日、東京都生まれ。54年劇団民芸に入団し、女優人生をスタートさせた。74年の舞台「蜜の味」で紀伊国屋演劇賞個人賞受賞。映画の出演は「御法度」「佐賀のがばいばあちゃん」「おくりびと」「燦燦(さんさん)」「家族はつらいよ」シリーズ、「DESTINY 鎌倉ものがたり」など。79年の「愛の亡霊」、14年の「東京家族」では日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞した。ドラマでもNHK連続テレビ小説「あぐり」「ごちそうさん」、「3年B組金八先生」シリーズ、「ナースのお仕事」シリーズなど出演した。エッセイストとしても活躍した。
父は詩人の吉行エイスケさん。1926年に仲間と「虚無思想」を創刊も33年ごろには断筆。35年に長女和子さんが誕生したが、自身は5年後の40年に34歳の若さで急死した。
母吉行あぐりさんは、日本で美容師の草分け的存在。24年に長男淳之介さんを出産後に美容師修行を始め、29年に美容院を開院。90歳を過ぎても仕事を続けた。2015年に107歳で死去。97年のNHK連続テレビ小説「あぐり」の主人公のモデルにもなり、田中美里(48)がヒロインを演じた。和子さんもヒロインが営む美容院の客役で出演し、話題となった。
兄の吉行淳之介さんは作家。東大除籍後に雑誌社で勤め、文筆活動も始めた。54年に「驟雨」で芥川賞を受賞。その後も70年谷崎潤一郎賞、79年日本芸術院賞など多くの文芸賞に輝いた。主な代表作は「砂の上の植物群」「暗室」「夕暮まで」など。94年に70歳で死去した。
妹の吉行理恵さんも作家。早大卒業後に詩集「青い部屋」を刊行するなど、最初は詩人としての評価が高かった。81年に小説「小さな貴婦人」で芥川賞を受賞。芥川賞史上初のきょうだい受賞となった。06年に66歳で死去した。
吉行和子さんは17年、映画「家族はつらいよ2」に出演した際の本紙インタビューで「家族はいるけど、我が家はみんなで食事したり悲しんだり喜んだりっていうのを経験しないまま終わっちゃった。今1人になってしまって、そういうことをまったく知らないで一生終わっちゃうはずが、この映画に出ることによって家族っていいなと思えました」と話していた。