内房金谷沖 2月のアジはまずい? いえ、最高です

釣ったアジを船に入れるときは豪快に引き抜いた方がバラしも少ない。木村さん、真剣な表情でアジを取り込んだ

<フィッシング・ルポ>

 やっぱり東京湾は面白い。今回のテーマは内房・金谷沖のアジ。通称・金アジだ。春夏秋冬いつでも釣れるが、光進丸の岡澤裕治船長は「2月のはうまくない」。じゃ、釣って食べてみよう! 

 もう答えから書いちゃう。とってもおいしい。若女将のめぐみさんにタタキにしてもらったのだが、さっきまで生きて金谷の海を泳いでいたのに、脂乗りもよくて、それとプリッ、としていておいしい。2月のアジはうまくない? 何をおっしゃるか、このアジ、最高にうまいじゃないか。

 岡澤船長 このアジは包丁を入れただけで、その切り口からじんわりと脂が筋状ににじんでくる。魚のうまみとあまみが詰まってますね。今年の冬は潮温が下がらないからなのか、アジがいつまでたってもうまい。おかしいです…いや、困らないんだけど。

 そうブツクサ言って首をひねる。うれしい誤算とはこのことか。

 日本テレビでTOKIOが自然と格闘する番組「ザ!鉄腕!DASH!!」のDASH海岸のコーナーに出演する海洋環境専門家の木村尚(たかし)さんと並んで釣り糸を垂れた。木村さん、この釣行日の翌日が新年会で「ぜひ金谷のアジで宴会をしたい」というミッションもあった。

 金谷のアジは何が違うのか。朝日に反射するアジの魚体はキランとゴールドに輝く…ように見える。金谷の「金」もあって、金アジなどと呼ばれる。

 岡澤船長 それは水ですね。港の南側から金谷川が流れ出ています。鋸(のこぎり)山からの養分を海に運んでくれる川です。その川の流れが海に出るといくつかの根があって、その周辺でいわゆる金アジが釣れるんです。

 その話を聞いて、木村さんが考え込んだ。

 木村さん 同じ東京湾で味が違うのは、食べるプランクトンの差と思われます。もし、金アジのうまさに理由があるとすると、海中の根から味をおいしくさせるプランクトンがわいて出るとか、なんでしょうか。

 あくまで仮説ではあるが、面白い事例ではある。

 釣りはシンプルだ。「アジはタナで釣る」。タナとは魚の泳ぐ層をさす言葉。このタナを外してしまうと何も釣れない。今回は海面から19~23メートルでブルルンとアタリがきた。港から船を出して5分ぐらいの場所だ。

 40号のカゴにコマセを詰めて、底(28メートル前後)まで落とさずに約25メートルで止めて巻き上げながらサオを振る。19~23メートルのヒットゾーンで10秒ほど待つと、アジがヒットしてサオ先が激しく揺れる。初心者やビギナーでも簡単楽チンに釣れてしまう。

 食味も岡澤船長の言葉を裏切る予想外のうまさなので、ちゃんと防寒さえすればおいしいアジをゲットできますよ。そうそう、2時間ほどで30匹を釣った木村さんは「とても充実した新年会になりました」と大喜びだった。【寺沢卓】

 ▼宿 金谷「光進丸」【電話】0439・69・2697。アジの乗合船は午前7時出船で、エサ、氷付きで8500円。午後便もあって午後1時30分出船で6000円。要予約。