死ぬかと思ったほどの胸痛/ハートで決まる健康長寿

ハートで決まる健康長寿

<たこつぼ型心筋症(1)>

 たこつぼ型心筋症をご存じですか。「心(こころ)」というと、多くの人は「心臓」を思い描くのではないでしょうか。事実、心臓と心は大きく関係しています。だから、精神的ストレスが大きく関係し、ストレスによって心臓が悪化することは、珍しいことではありません。

 2004年の新潟中越地震、11年の東日本大震災、16年の熊本地震の時には、災害後2カ月間に発症した循環器疾患としては、たこつぼ型心筋症が大幅に増えていたことが分かっています。地震、津波のストレスが大きな誘因になっているのです。

 心疾患のひとつであるたこつぼ型心筋症は、突然「胸痛」に襲われ、「呼吸困難」を伴う極めてつらい症状です。実際の経験談の中には、それ以前に狭心症を体験していた人が「狭心症、心筋梗塞の症状に似ていて、死ぬかと思った」との言葉で表現したケースもありました。

 もう少し症状を詳細に紹介すると、きつい状態だから、つい身体を横にしてしまいます。すると、より状態はつらくなり、息切れが起きてしまいます。そんな時、横にしていた身体を起こして座った状態にすると、比較的息苦しさが緩和されます。これを「起坐(きざ)呼吸」といいます。この症状が起こる人もいます。

 このような症状に見舞われた人は、のんびり構えては取り返しのつかないことになる可能性があります。狭心症や心筋梗塞と同様に、たこつぼ型心筋症も一刻を争います。すぐに救急車を呼びましょう。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)