<心不全(6)>

 心不全の人の10人に1人が体験する生死を分ける「心原性ショック」。その治療としては、心臓をサポートする器械を取り付けての補助循環法が3種類くらい行われています。しかし、その治療は一長一短で、完璧ではありません。

 そこに昨年9月、保険適応としてカテーテル型の人工心臓「ハートポンプ」が登場。名称は「インペラ」で、心臓そのものの収縮を活性化する治療方法です。

 注目のインペラは、脚の付け根の大腿(だいたい)動脈からカテーテル(細い管)を挿入し、心臓の大動脈弁を通して、左心室まで挿入します。左心室は全身に流れる血液を送り出す部屋です。そこに、カテーテルで届けたポンプカテーテルを留置します。

 そのポンプ内のインペラ(羽根車)が高速回転することで、ポンプカテーテルの先端の吸入部から血液を吸引し、左心室から出たすぐの上行大動脈で血液を吐き出し、全身へ流します。インペラの場合は、身体の外にモーターを置くのではなく、上行大動脈に設置される超小型のモーターです。これで心臓の収縮力をカバーし、心臓を休めることができるので、心臓のポンプ機能を回復させることができるのです。また、補助の人工心臓に比べて手術が大掛かりでないのも、早く治療に入ることができるポイントです。

 この治療は海外での豊富な症例により、国内では症例ゼロのまま承認され、国内最初の治療は昨年10月に大阪大学で行われました。インペラの治療が許可された病院は2018年2月12日時点で、大阪大学を含め全国34施設になっています。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)

 ◆心原性ショック 心臓のポンプ機能が急激に悪化し、十分に酸素の供給ができなくなる状態。心不全患者さんだけでなく、急性心筋梗塞、不整脈、大動脈解離などでも心原性ショックに至ります。