<フィギュアスケート:北京オリンピック(五輪)>◇15日◇首都体育館◇女子ショートプログラム(SP)
団体戦銅メダル獲得に貢献した全日本女王の坂本花織(21=シスメックス)が3位発進した。重圧の懸かる最終滑走で、自己ベストとなる79・84点を記録した。 冒頭の2回転半を鮮やかに着氷すると、続く3回転ルッツ、フリップとトーループの連続3回転ジャンプと、すべてのジャンプを決めた。
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坂本の目から自然と涙があふれた。演技後に中野園子コーチ(69)から抱き締められ、緊張から解き放たれた。「ロシアの3強が目の前にいて空気が全然違う。怖かった。膝の震えが止まらず、無駄に心拍数が上がった」。それでも演技後半のフリップ-トーループの連続3回転など、全てのジャンプを決めた。演技構成点は5項目中4項目で10点満点の9点台。首位と2・32点差につけ「アクセル(3回転半)なしでここまで出せた。自信になります」と自己ベストを喜んだ。
好演技の感覚は体に染み付く。4歳から指導を受ける中野コーチが率いるスケートクラブは通称「神戸組」。そこに「ミス止め」という恒例メニューがある。
夏、練習は午前5時45分に始まる。小学生から坂本らトップ選手まで全員でスケーティングをし、1時間が経過すると、それぞれの演目をかける「曲かけ」が始まる。まずはSP。3つのジャンプのどこかに失敗があると、曲が止まり、順番は次の人へと移る。再度の挑戦でもSPをミスなく通せなければ、フリーにさえ進めない。坂本にも特別扱いはなく、ほとんど年中、その練習で力を高めた。
2日前、滑走順抽選で大トリを飾ることが決まった。ワリエワのドーピング問題で周囲は騒がしいが「自分のやることは変わらない。頭から省いて、何も考えずにいた」とぶれなかった。3位で迎えるフリーへ「この4年間、頑張ってきた成果を出し切りたい」と誓った。貫いた先にはメダルも見えてくる。【松本航】